revolving lantern : (ページ17)

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彼女とある程度話を進めている内に彼女が打解けるなんてことはなく、終始殺伐とした雰囲気で打ち合わせを終えた。先日の打ち合わせで見たフォルダの笑顔の彼女と同一人物なのだろうかと怪しんでしまった。

仕事の承諾を得れたところで、いつもの彼女を知っている連中はその態度にやれやれ、と頭を抱えていた。

「大希ごめんね、いつもはもっと優しいんだけど...」

「はは、別に気にしてねえよ」

フォローにまわる関係者も、そうやって笑った俺も見えているくせに彼女はそっぽを向いて知らん振り。

「Aちゃん」

名前を呼んでも、彼女は俺を横目でチラリと見るだけ。

「この先色んな人と仕事するだろうけど、
俺にだけはそうやって生意気でいても文句いわねえから

とにかく良いもん造ろう」

少し目を丸くして、彼女はそのままスタジオから出ていった。

歳下で、生意気に返事をする彼女を憎たらしいなんて1度も思ったことは無かった。寧ろ興味すら湧いた。

それからしばらくうちのスタジオで作業することも増え、話す事はごく稀ではあったが何度か仕事の進捗を伺った時のこと。

「どんな感じ？」

「...常田さん、...こんにちは」

「.......常田さん...」

彼女が初めて俺を常田さんと呼んだ時は流石ににやけが抑えきれなかった。

*

そんな彼女が今では大希さんと呼び俺の後を追いかけてきたり、顔色伺ってきたりするもんだからそれはそれは、可愛くて仕方がなかった。

スタジオで荷物をまとめるAちゃんを見て、少し寂しい気持ちになる。最初は妹みたいに可愛がってるつもりが、いつの間にか本気で惚れてしまうなんて不覚あるだろうか。

「...あ、大希さん」

「ん？」

「年内に個展開く予定があって」

「へぇ、個展か。良いじゃん」

「その...大希さんも来てくれますか？」

不安そうにそう聞いたAちゃん。

「もちろん。ぜひ行かせてもらうわ」

「良かった、頑張ります」

俺に隠れて小さくガッツポーズしてるつもりだろうが、丸見えだった。

そんな可愛くて可愛くて仕方が無い彼女を殴って怪我をさせる男の元になんて本当は帰したくない気持ちでいっぱいだった。

今でも顔はうっすら赤くて、手首には昨日和樹が処置した物や湿布等の数々。
今の彼氏に殴られて画材を壊され、それでもかっこいいとはやし立てた俺を選ばないのはきっと彼女にとって俺がどこまでいってもアーティストとしての”先輩”に過ぎないのだろう。