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『お母さん、私、ここで過ごしたい。
……今の学校にいるのは、もう嫌』
「…そっか。じゃあここで暮らそうか」
あれから、五日。
帰る予定だった今日、私は初めて自分の思いを素直に打ち明けました。
案外軽く返ってきた了解の返事。
私は思わず、目を見開きました。
『お母さん』
「ん？」
『…ありがとう』
五日間、私は二人とずっと一緒に過ごしました。
祠にお供えをしたり、もう必要のないシロツメクサやマリーゴールド、タンポポを摘んだり。
そしてそこには、新しく、朝顔を植えました。
海にも、本当はいけないけれど、花束を流しました。
花の名前を忘れるほど沢山の花を束ねて流しました。
「…うん。どういたしまして」
『崇裕くんたちのところ行ってくるね』
「行ってらっしゃい」
ああ、やっぱり思い出した。
照史さんへの花束には、マリーゴールドも。
『お待たせ！』
「今日はなにするん？」
「んー、今日は虫取りや！」
「は！？絶対嫌や！！」
後から知ったんです。
マリーゴールドには「絶望」の他にも「友情」という花言葉があるらしくて。
絶望の意味で摘んだそれとは別に、もう一度。
彼に送ろうって、話し合って決めました。
『ふふ、』
「「ん？」」
『いや、幸せだなあって』
それぞれ、大事な人を失った。
私は、大毅を。
崇裕くんは、夏歩さんを。
淳太くんは、照史さんを。
でもだからこそ、貰った未来がある。
「ほんなら淳太の家は？」
「えー、別にええけど…」
『じゃあ決まりだね！』
淳太くんが、彼の家族を説得してくれて。
崇裕くんは徐々に、居場所を取り戻しつつあります。
本当のことを言わなければ、誰も気づかない。
そのことに気づいてからというもの、私たちは幸せと呼ばれるものを満喫しています。
「あら、いらっしゃい」
『お邪魔します』
「ゆっくりしていって」
涙も笑顔も、分け合って。
『あ、蝉時雨…』
「ふふっ、覚えたら使いたなるやろ！」
『ちょ、言わないでよ！かっこ悪いじゃん！』
「なにしてんねん」
大きな命という括りでも、小さな幸せが集ってできていることに変わりはない。
だから、小さな幸せは、なによりも大事に。
例えるのなら、それはきっと………
『淳太くんの家って海見えるんだね』
「綺麗やろ」
「ええなあ」
海の滴のように、見えない小さな幸せですからね。
___Fin
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一波(プロフ) - お返事ありがとうございます！とても嬉しいです！凛憧さんのまだ読んだ事ないお話読むのがとても楽しみになりました。 (2019年10月6日 15時) (
レス) id: 00967ad8ca (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - 一波さん» とても嬉しいです、ありがとうございます。感情を留めずに一気に読んでもらえるなんて嬉しくて、とても光栄に思います。是非また読みにいらしてください。拙い文章ではありますが、いつでも迎えさせていただきます。こちらこそ、読んでいただきありがとうございました。 (2019年10月6日 0時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
一波(プロフ) - 気付いたら読み終わっていた。それ位このお話に夢中でした。栞は挟んだままにしておいて、お話の中の皆に会いたくなったらまた来ようと思います。素敵なお話をありがとうございました。 (2019年10月6日 0時) (レス) id: 00967ad8ca (このIDを非表示/違反報告)
一波(プロフ) - 凛憧さんのスウィートバイオレットのお話の雰囲気がすごく好きで、同じ作者さんのはまちゃんのお話が読みたくて来ちゃいました。読み出したら止まらなくて一気読みしちゃいました！読んでいて苦しくもありましたが、それ以上にどうかみんなにしあわせなラストをと祈り (2019年10月5日 23時) (レス) id: 00967ad8ca (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - 雷さん» ありがとうございます。丁寧な感想、気持ち、伝えていただけるのは書いている身の上とても嬉しいです。優しいお言葉を励みにこれからも頑張らせていただきます。閲読いただきありがとうございました。 (2019年8月8日 20時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
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