夏の魔法にはご注意を。

「4」 ページ47

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「あ、小瀧」

「おお、来てたん？」

「ついさっきまでみんなでおったんやけどなー。
リア充見せつけられるから抜けてきてん」

「いやなんやねんそれ」

「でもここにもリア充おったわー」





わざとらしく、私を見てニヤリと笑うクラスメイト。


望といれば、男子からのからかいはいつもだけれど、私はこの雰囲気があまり好きじゃない。

どれだけ「違う」って否定しても、照れ隠しだなんだと言って掻き消される。


そのせいで、望と気まずくなったことも少なくない。


望を傷つけたくない。
迷惑にだけは、なりたくないのに。

からかいの言葉に、容赦なんてない。





「付き合ってるんやろ？」

『や、違うけど』





こんな場面に出くわす度に、望は気を遣って私をその場から逃がしてくれていた。


でも今は、そうはいかない。

こんな人混みの中、逸れたら見つかる保証はないし、二人の暗黙の了解として、約束は破っちゃいけない。


一緒に行くって、約束したから。

逃げるなんてことはしないし、できない。





「俺はええと思うで？
お似合いやし、お互いのこと分かってそうやし」

『っ、だから、』

「なに勘違いしてるんか知らんけど、Aとは付き合ってないで？」





付き合ってない。
そうだよ、望とは付き合ってない。


それなのに。





「俺が一方的に好きなだけやねん。
やからさ、気まずい雰囲気にしないでくれへん？」





その言葉に、ドキッと胸が鳴る。


これ以上この気持ちを認めてしまったら、もう望のそばにはいられなくなる。

それが、ただ怖くて。





「そうなん？うわ、なんかごめんな小瀧」

「おう。分かったならええわ。
せやけどこれで振られたらお前のせいやかんな！」

「えー！それはやめてや！」





全てを笑いに変えて、さり気なく、嫌な気持ちを追い払ってくれて。

いい親友をもったな、なんて。


まだドキドキしてる心臓には、気づかれたくない。


その笑顔もなにも見れなくなったら、それは間違いなくなによりもつらいから。

気づかないフリをし続ける。





『嘘言ってくれてありがとう。
ごめんね、いつも気遣わせてて』





だから、お願い。





「…ええねん。それくらいしかできひんからさ」





悲しそうな顔にも、今は見ないフリをさせてほしい。

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