夏の魔法にはご注意を。

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「んわっ、切れた！」

『先輩、ヨーヨー釣りはダメなんですね』

「射的は得意なんやけどなあ」





切れた紙の持ち手をぶら下げる。

少し拗ねたようにも見えるその顔に、なぜか私は二個取ろうと頑張っていた。





『っ、とれた！』





紫色と透明のヨーヨー。

水が入ったそれは、ひんやりといい感じに冷たい。





『先輩、これあげます』

「え、ええん？」

『紫色でいいですか？』

「嬉しいわ、ありがとうな！」





熱くなった頬を誤魔化すためとはいえ、先輩とするヨーヨー釣りは中々楽しくて。


んー、と唸りながら頑張る先輩。
取れへん、なんて落ち込む姿。
ありがとう、って言ったとびきりの笑顔。

部活のときのあの格好いい先輩とは反対に、可愛くて愛くるしい先輩で。


これが世に言う「ギャップ」なのだと思った。





「わ、めっちゃ冷たいやん」

『さっきまで冷たい水に浸かってましたからね』





むぎゅ、と頬にヨーヨーを押しつける先輩に、破裂しないかと少しハラハラする。

でも、冷たい冷たいとはしゃぐ先輩を見たらやっぱりそんな不安も何もなくなって。





「わっ！ちょ、驚かさんといてや！」

『ふふっ、冷たいですか？』





透明と紫色。

二色のヨーヨーに挟まれたその顔は、冷たそうに目を細めて、やっぱりちょっと拗ねる。


でもまたすぐに笑顔に戻るんだ。





「Aってさ」

『はい？』

「意外とイタズラ好きやねんな」





そう言ってふわりと微笑まれたら、何をどう返していいか、分からなくなるじゃないですか。

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