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『今何時？』
「あと十分で九時」
『え、もうすぐ花火じゃん』
「せやな」
私服じゃないのに、袖を手でどかして時計を見るのも大毅らしいのに。
やっぱり、前とは違う体つきには慣れなくて、態度には出さずとも、心臓がうるさく騒ぎ出す。
いつの間に、こんなに男になったんだろう。
自分の知らない大毅がいる。
そのことにときめいてる。
「行くで」
『え？』
「公園」
今度は、繋がれた手。
伝わる熱に私まで恥ずかしくなってくる。
『ちょ、大毅？』
人波に逆らうように引かれていく。
道路に出てしまえば、お祭りのせいで人はいない。
それをいいことに、固く握られていたはずの指が解けて、絡まった。
『へ、』
「歩きにくそうやから」
ねえ。ずるいよ。理由になってない。
そんな笑顔見せられたら、絡んだ指に、ぎゅっと力を込めるしかないじゃない。
「今だけ、許して」
心臓が狂いそう。
でも、嬉しい。
ずっと望んでた距離に、今いるんだ。
そう思うと、公園に着くまで長い五分に、終わるなと願いたくなってしまった。
「ちょっと待って」
公園に入ってすぐ、大毅はベンチの裏に回った。
『これ…』
「高校最後やから、いつもと違うことしたいなって」
離れた手に寂しさを感じていれば、そんな手に握らされた二本の線香花火。
どこから持ってきたの？
なんで線香花火なの？
一緒にやるのが私でいいの？
湧き上がる疑問を払うように大毅はライターで火をつけた。
「勝負しようや！」
『え？ちょ、それ普通は火つける前に言うでしょ！』
二人で、赤々と燃える火玉を落とさないように会話し合う。
なぜか強くなる口調に、同じタイミングで吹きだす。
暫くしてまた訪れる沈黙。
不思議と苦しくはなくて。
寧ろこの時間が永遠に続いてほしいと思った。
「『あ、』」
同時に落ちた花の蕾。
弾けた火花が途端に消えて、暗くなってきた夜空のように周りが暗くなった。
「どんだけ仲良しやねん」
『ね、もう一回やろ！』
「ははっ、ええよ、俺も思ってた」
抱いていた疑問は気づいたらどこかへ飛んでいて。
線香花火の儚い美しさに魅入っていた。
「なあ」
最後の線香花火。
落とさないように、視線だけを大毅へと動かす。
じっと線香花火を見たまま。
「…好きや」
大毅は、私にそう言った。
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凜憧(プロフ) - まさなさん» ありがとうございます。私も今は徐々に自分を奮い立たせてなんとか行ってます…笑 少しでもお力になれるよう、これからも執筆を続けて参ります。 (2019年12月7日 1時) (
レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
まさな(プロフ) - 凜憧さん» あれ、読んでくれてるんですか！？嬉しいです！海の滴のあとがきで泣きました。私も数ヵ月前まで保健室登校だったので、凛憧さんの気持ちが分かりました。いつまでも応援してます (2019年12月7日 1時) (レス) id: 709458c7d0 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - まさなさん» なんて嬉しいことを言ってくださるんですか…！大ファンだなんて、もう泣きそうなくらい嬉しい言葉です… チラッと作品の名前を拝見させていただいたのですが、ままがむかえにこなかった。という作品、私読んでおります！！笑 お互い頑張りましょう！ (2019年12月7日 0時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
まさな(プロフ) - 『海の滴《紫》』も読んでるんですよ。『夏恋注意報《赤》』も読んでます。そして他の作品もすべて読んでます。私って凛憧さんの大ファンじゃないですか？（唐突）大好きです！頑張って下さい！応援してます(о´∀`о) (2019年12月6日 22時) (レス) id: 709458c7d0 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - ばと担さん» ありがとうございます！わ、キュンキュンしてもらえてよかったです！嬉しいです、頑張らせていただきます！ (2019年7月9日 11時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
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