「Last」 ページ35
.
『あ、時間大丈夫かな?』
「九時やっけ」
『ここから神社まで結構あるし、早めに……』
「なあ、花火さ、二人で見ん?」
『…え?』
「あ、いや、…あの二人多分付き合ってるし、二人にしてあげた方がええかなって」
『つ、付き合ってるの!?』
「雰囲気的に、多分」
『そっか、付き合ってるなら…その方がいいよね』
途端にうるさくなりだす心臓に、落ち着け、落ち着けとブレーキをかける。
私と見たいわけじゃない。
あの二人の邪魔にならないように、一緒に見ようって言ってくれてるんだ。
そう必死に言い聞かせたら、なんだか少し苦しくて。
私、藤井くんのこと好きなのかもって。
一目惚れなのかもって。
恋なんてしたことないのに、そう思った。
「あの、さ」
『ん?』
「今日、ずっと言おうと思ってたんやけど」
人が少ない駐車場。
花火がよく見えるだろうと決めたその場所は、心臓の音が聞こえてしまいそうなくらい静かだった。
「Aちゃんのこと誘ったん、ほんまは俺やねん」
ゆっくりになる景色。
え、と出た掠れた声でさえ、この静かな駐車場では響いてしまう。
頬を赤く染めた藤井くんは、私をチラリと見た。
「望があの子と仲ええん知って、誘ってってあの子に頼んでん」
「ほんまは直接誘いたかってんけど、男子苦手やってあの子に聞いてたからなんか、誘えへんくて」
「でも、来てくれてよかった。
好きな人の浴衣見れるのって、嬉しいもんやな」
そう照れたように、はにかんだ藤井くん。
ああ、浴衣を着る意味、分かったかも。
好きな人に、付き合ってる人に、誰よりも可愛いって思ってもらいたいからだ。
「俺さ、入学式んとき見て一目惚れして。
そっからずっと、話せへんかなって思ってた」
「Aのことが、好き」
呼び捨てされた名前。
花火が上がる。歓声があがる。
聞こえているのに、聞こえない。
まるで二人だけの空間にいるみたい。
『ふ、藤井くん』
「なに?」
『…あのね、』
息をすうっと吸い込んで、呟くように言った言葉。
ぱあっと笑顔になって私を抱きしめた藤井くんに私は一目惚れしてしまった。
『私も、藤井くんに一目惚れしました』
打ち上がった大輪の花火。
初めて着た浴衣。
大好きな人と一緒に浴衣を着て、花火を見たこと。
甘すぎるくらいの、初めてのキス。
全て、夏祭りの宝物。
『浴衣姿』Fin.
837人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凜憧(プロフ) - まさなさん» ありがとうございます。私も今は徐々に自分を奮い立たせてなんとか行ってます…笑 少しでもお力になれるよう、これからも執筆を続けて参ります。 (2019年12月7日 1時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
まさな(プロフ) - 凜憧さん» あれ、読んでくれてるんですか!?嬉しいです!海の滴のあとがきで泣きました。私も数ヵ月前まで保健室登校だったので、凛憧さんの気持ちが分かりました。いつまでも応援してます (2019年12月7日 1時) (レス) id: 709458c7d0 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - まさなさん» なんて嬉しいことを言ってくださるんですか…!大ファンだなんて、もう泣きそうなくらい嬉しい言葉です… チラッと作品の名前を拝見させていただいたのですが、ままがむかえにこなかった。という作品、私読んでおります!!笑 お互い頑張りましょう! (2019年12月7日 0時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
まさな(プロフ) - 『海の滴《紫》』も読んでるんですよ。『夏恋注意報《赤》』も読んでます。そして他の作品もすべて読んでます。私って凛憧さんの大ファンじゃないですか?(唐突)大好きです!頑張って下さい!応援してます(о´∀`о) (2019年12月6日 22時) (レス) id: 709458c7d0 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - ばと担さん» ありがとうございます!わ、キュンキュンしてもらえてよかったです!嬉しいです、頑張らせていただきます! (2019年7月9日 11時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ