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「大丈夫ですか?」
『神山くん、私別に足痛くないよ』
「…え!?」
人がいない神社の方までわざわざ連れてきてくれたのに、申し訳ない。
こんな言い方しかできない女って、やっぱりどこも可愛くないんだよなあ。
「A先輩、」
『…どうしたの、泣きそうじゃん』
座った私につられるように、神山くんも座り込む。
なんでそんなに泣きそうな顔するの。
そんな顔、しないでよ。
私まで泣きたくなっちゃう。
「やっぱり、俺と一緒は楽しくない?」
『え、』
「なんか今日ずっと上の空やし、いつもの笑顔見せてくれへんし」
やっぱり、後輩とは嫌?
お願い。
そんな顔しないでってば。
『…ちが、うよ』
『神山くんが変なことするから…
手なんか繋ぐから、ドキドキ、しちゃう』
『いつもとなんか違うし、変に優しさ増してるし…
私だって、何がなんだか分かんないのっ、』
誰もいない神社の周り。
楽しそうな声だけが響いて、やっぱり泣きそう。
神山くんも、この声みたいにはしゃぎたかったかな。
「なに、それ」
『ちょっ、神山くん?』
「何それ、先輩ほんま可愛すぎ」
ぎゅっと抱きしめられて、頭の中はもうパンク寸前。
それなのに、彼の温もりが嬉しくて、頬が緩む。
何気なく掴んだ浴衣の襟。
その浴衣、もしかして私のため?
二人で浴衣を着て回りたかったからって、自惚れてもいい?
ねえ、神山くん。
私と来たいって言ってたのは、なんで?
「A先輩のアホ」
『ひどい、何をいきなり』
「鈍感すぎや」
ぎゅううと強さを増す腕。
ふわっと香る柔軟剤の匂いにまた胸がドキッとした。
「ほんまはめっちゃドキドキして、緊張してんねん」
「浴衣やって、ほんまに着てきてくれたんも嬉しい」
いつもより少し低い声。
心臓の音がうるさい。
「手繋いだのも、優しくしたのも、一緒に来たいって先輩誘ったのも、全部」
「先輩のことが、好きやから」
確かに耳元で聞こえたその声に、顔が赤くなる。
そんな男の子らしい顔つき、初めて見た。
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凜憧(プロフ) - まさなさん» ありがとうございます。私も今は徐々に自分を奮い立たせてなんとか行ってます…笑 少しでもお力になれるよう、これからも執筆を続けて参ります。 (2019年12月7日 1時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
まさな(プロフ) - 凜憧さん» あれ、読んでくれてるんですか!?嬉しいです!海の滴のあとがきで泣きました。私も数ヵ月前まで保健室登校だったので、凛憧さんの気持ちが分かりました。いつまでも応援してます (2019年12月7日 1時) (レス) id: 709458c7d0 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - まさなさん» なんて嬉しいことを言ってくださるんですか…!大ファンだなんて、もう泣きそうなくらい嬉しい言葉です… チラッと作品の名前を拝見させていただいたのですが、ままがむかえにこなかった。という作品、私読んでおります!!笑 お互い頑張りましょう! (2019年12月7日 0時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
まさな(プロフ) - 『海の滴《紫》』も読んでるんですよ。『夏恋注意報《赤》』も読んでます。そして他の作品もすべて読んでます。私って凛憧さんの大ファンじゃないですか?(唐突)大好きです!頑張って下さい!応援してます(о´∀`о) (2019年12月6日 22時) (レス) id: 709458c7d0 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - ばと担さん» ありがとうございます!わ、キュンキュンしてもらえてよかったです!嬉しいです、頑張らせていただきます! (2019年7月9日 11時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
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