「1」 ページ2
.
『夏祭り…』
「うん。A行くでしょ?」
『もうそんな時期だっけ。
なんか…最近バタバタしてたから忘れてた』
「受験生だからって勉強しすぎなの。
息抜き程度にさ、一緒に行こうよ」
『…分かった。いいよ』
高校最後の青春。
友達からの誘いに一瞬戸惑うのは、頭に浮かぶ彼奴のせい。
去年の熱を、今でも覚えてる。
幼馴染みに恋してもう十年以上。
私だけの肩書きが嬉しくて、でもそれが引く一線に、苦しんで。
あの笑顔に、何度も恋に落ちた。
「あ、でも重岡と行くのか」
『いや、今年は誘われてないから大丈夫。
大毅だって一緒に行く彼女くらい、いるだろうし』
「自分で自分の首絞めるね」
『…だってさあ、』
当たり前になっていた大毅との夏祭り。
逸れるから、なんて言って掴ませてくれた浴衣の裾を嬉しさと苦しさを込めてぎゅっと握っていたあの夜。
すれ違った恋人に彼は足を止めて。
少し羨望を含んだその視線の先にいた男の子。
大毅の仲のいい友達だと気づいたのは、彼に腕を引っ張られた後だった。
あんなの、嫉妬してるとしか思えないよ。
掴まれた手首が帯びた熱。
滲んだ視界に感じた熱。
何度も感じた感情に、心の中で葛藤していた。
「もう最後なんだから告白すればいいのに」
『高校生としての夏祭りが、でしょ。
まだその後の学校生活が半年以上もあるじゃん』
「心配しすぎだって」
『無理。
幼馴染みも務まらなくなったら本当に関わりなくなっちゃうもん』
それだけが怖い。
大毅を好きでいることも許されなくなったら、なんて考えるだけでも耐えられないのに。
実現してしまったら、どうなるか。
「はいはい、分かったって。
重岡と一緒に行かなくて本当にいいのね?」
『…うん』
「じゃあ神社に八時集合で」
『了解』
そろそろ、吹っ切れなきゃ。
現実を見なきゃいけない。
837人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凜憧(プロフ) - まさなさん» ありがとうございます。私も今は徐々に自分を奮い立たせてなんとか行ってます…笑 少しでもお力になれるよう、これからも執筆を続けて参ります。 (2019年12月7日 1時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
まさな(プロフ) - 凜憧さん» あれ、読んでくれてるんですか!?嬉しいです!海の滴のあとがきで泣きました。私も数ヵ月前まで保健室登校だったので、凛憧さんの気持ちが分かりました。いつまでも応援してます (2019年12月7日 1時) (レス) id: 709458c7d0 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - まさなさん» なんて嬉しいことを言ってくださるんですか…!大ファンだなんて、もう泣きそうなくらい嬉しい言葉です… チラッと作品の名前を拝見させていただいたのですが、ままがむかえにこなかった。という作品、私読んでおります!!笑 お互い頑張りましょう! (2019年12月7日 0時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
まさな(プロフ) - 『海の滴《紫》』も読んでるんですよ。『夏恋注意報《赤》』も読んでます。そして他の作品もすべて読んでます。私って凛憧さんの大ファンじゃないですか?(唐突)大好きです!頑張って下さい!応援してます(о´∀`о) (2019年12月6日 22時) (レス) id: 709458c7d0 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - ばと担さん» ありがとうございます!わ、キュンキュンしてもらえてよかったです!嬉しいです、頑張らせていただきます! (2019年7月9日 11時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ