きゅんきゅんありおかくん(Daiki.A) (ページ29)

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#29　家の鍵がないページ29

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仕事中は邪魔になるからとマナーモードにしておいた携帯。
岡本くんと別れた後、電車の中で携帯を開くとそこには何十件もの通知が。

不在着信、「どこにいるの？」の一方通行なトークルーム。
そのメッセージに既読をつけた瞬間、画面には彼からの着信を告げる表示が出た。

「...電車の中だし」

着信拒否のボタンを押し、彼に「電車の中」と簡潔なメッセージを送信する。
すると彼は私が直帰だということに気がついたみたいで。

「降りたら電話して」なんてそっけないメッセージとスタンプを送ってきた。

昨日のこともあってか、少しだけ大貴を顔を合わせるのに抵抗する気持ちもあるけど、
何十回もかかってきていた電話を無視できるような性格ではなくて。

駅について改札を出て、もうすぐ夏だからまだ薄暗い道を歩きながら彼に電話をかける。

「...かけてきてっていったのは大貴なのに」

何回電話をかけても、繋がらない。
俗に言う「お留守番サービス」に繋がってしまう。

かけてきたのは大貴なのにね、なんででないんだろう。

そんなことを考えながら歩いているといつのまにかついたマンション、
家に入ろうと鞄から鍵を探す。

...あれ、あれ。
いつも入れてるはずのポケットに鍵が入ってない。

「え？なんでだろ...」

鞄の中を全部出して探しても、ドアノブを何度もひいても。
鍵は見つからない、ドアは開かない。

どうしたらいいんだろう。
どこかで鍵を落とした？でも落とすようなところにいれてないし。

...そんな時。
ポケットに入れていた携帯が音を奏でる。

「...もしもし」
大貴「あ、もしもし！A？やっと出てくれた」
「さっきから何回もかけてたんだけど」
大貴「うそ、それはごめん」
「電話の用ってに？こっちも用事あるから早くして欲しいんだけど...」
大貴「Aさ、鍵、なくしてない？俺の家にあるんだけど...今どこにいんの？」
「家の前...」

なかった鍵が、大貴の家にある。
ってことは大貴、もう家に帰ってるの？

昨日、大貴の家においてきたのかな、
でも確か鞄は触ってないはず...。

大貴「届けに行くから待ってて」
「いいよ私が取りに行く」

そんな言葉も届かずに切られた電話。
鍵があったことはいいんだけど

大貴、私の家知らない気がする。

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