きゅんきゅんありおかくん(Daiki.A) (ページ25)

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それから少し、他愛のない話をした。
彼は私の引越し先の東京から来たらしい。

こんな田舎、嫌な顔ひとつせずおばあちゃんに会いにくるなんていい人だな、とその時は思っていたけど、
しばらくしてから大貴に『実は嫌だった』ときいて何もいえなくなった。

彼に名前を尋ねたら、有岡大貴と返ってきた。
おばちゃんのお孫さんなんだ、あんまり顔似てないな、なんて思ったり。

大貴くんは、私と同い年だった。
思ったとおりだ、と見えないように口角を上げた。

30分くらいして、ついた先は有岡のおばあちゃん家。
やっとたどり着いた、と疲れている彼。

弾んでいた話、本当はもう少ししたかったけど疲れてるなら休んだほうがいいかなって。
彼に別れを告げて家へ戻った。

家へ戻ったはいいけど、することが見つからなくて。
少し歩いたこともあってか、なんとなく川へと歩いた。

ぱしゃぱしゃ、とサンダルのままその小さな川にはいって水を蹴るように足を動かす。
ここは葉で太陽の光が遮られてる、比較的涼しい場所。

そこで時間をつぶしていると、またもや足音が聞こえた。

「あ、大貴くん」
『Aちゃん...』

また、大貴くんに会えた。
なぜだかそれがすごく嬉しくて、また話していたいな、と水遊びなんて適当な理由で引き止めた。

『ねぇ」
「ん？」
『Aちゃんはどこに住んでるの？さっきも探したんだけど家が見つからなくて...』
「ふふ、それは内緒です」

彼が、私のことを探してくれていたことも嬉しかった。
たった数分の時間しか一緒にいなかったのに、私の中は彼でいっぱいだった。

そんな大貴くんにまた会いたいな、なんてこと口にする勇気はなくて。
「有岡のおばあちゃんちの縁側に座ってよ。そうしたら会いに行ってあげる」すごくえらそうに、遠回しにそんなことを伝えた。

大貴くんには、他の予定があるかもしれない。なんてことは考えなかった。
嬉しさでいっぱいだった私にそんな後ろめたいこと考える余裕は無かった。

それからというもの私は毎日、おばあちゃん家の縁側を覗いた。
数日は姿を見せてくれなくて、やっぱり無理だったのかな、ってあきらめてたけど

大貴、貴方は私の期待を裏切らなかった。
縁側。大貴はそこで私を呼んだ。

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