きゅんきゅんありおかくん(Daiki.A) (ページ13)

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#13　大粒のいちごページ13

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大貴につれられてきたのは小さなケーキ屋さん。
こんなところにこんなお店あったんだ。

『いらっしゃいませ～...あ！大ちゃん！』
『早速来ちゃいました～』

お店に入るなり、店員さんと話を始める大貴。
もしかして、知り合いなのかな。

背が高くて優しそうで。
服装からしてあ、パティシエさんなんだってわかった。

ショーウィンドウに並べられたたくさんのケーキ。
どれもおいしそう。

『好きなの選んで？』
「わかった。」

すっと解けた手。
私はショーウィンドウに釘付けになる。

ショートケーキにチョコレートケーキ、モンブランにタルト。
好きなの、なんて選べない。

大貴は、さっきのパティシエさんと何かを話してる。

『決まったー？』
「ううん、まだ」

そういえば今は昼休みだったことを思い出す。
早く選ばないと。

たくさんのケーキ。
その中でも一際輝いていた大粒のいちごがのったシャルロット。

「大貴、私これにする」
『おっけー、裕翔、これもらっていい？』
『りょーかい！ちょっとまってね～』

‘裕翔’と呼ばれたパティシエさんは私の選んだシャルロットをひとつ、かわいらしい箱に包んでくれた。
それを受け取る大貴。

『ありがと、じゃ、また今度』
『こちらこそ、楽しみにしてて！』

『行こ？』となにもなかったかのように再び手を差し出してきた大貴。
迷わずその手を握るとすぐに絡む指。

「お金、出したのに」
『俺が買いたかったからいいのー！』
「ありがと...」
『へへ、』

照れくさそうに笑って、風で少し崩れた前髪を顔を振って直す。
腕時計が示す12時55分。きっと間に合わない。

『間に合うかな？』
「間に合うんじゃない？」

時間なんて、大貴に伝えなかった。もし教えたら、急ぎそうで。
それでもよかった。

この時間を少しでも長く味わいたいがためについた小さな嘘。
ごめんね、大貴。でも許して？

幸せな時間は、長いほうが嬉しいから。

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