きゅんきゅんありおかくん(Daiki.A) (ページ11)

今日:29 hit、昨日:1 hit、合計:168,723 hit

#11　正面のデスクはつらいですページ11

・

あの日から、私はしばらくデスクワーク。
ずーっと椅子に座って書類の製作。

おかげで日に当たることは無くなったけど、少し腰が痛くなる。
年のせい？ううん、私まだまだわかい。

私のかわりにっていうか、最近外回りに出てるのは伊野尾くんと山田くん。
だから私の正面には

『...あー、またミスった』

久しぶりのデスクワークに指が慣れない大貴がいる。
ずっと、『ミスった』だの『間違えた』だの先が見えないような独り言ばかりが聞こえてくる。

デスクワークになってから、毎日残業してるんじゃないのかな、大貴。

帰社するとき、いつも大貴が残ってるのを見てる。

『やば～い、おわんねぇ』
「...大丈夫？大貴、」
『ううん、無理、笑』
「手伝おっか？」

独り言...には聞こえない、話しかけて欲しいオーラを出しまくってる大貴に、少し小さめの声で話しかける。
ちらっとパソコンから顔を出すと、そこには外回りのときのような無邪気な顔をした大貴はいなくて。

出口の見えないトンネルをさまよってるような、絶望した顔の大貴がいた。

『ねぇ』
「なに？」
『昼さぁ』
「うん」
『テラス行かない？』

くりんとした丸い目で私を捉える。
...そんな目、断れるわけないじゃん。

「いいよ、」
『やったー!!これでがんばれる』
「ふふ、がんばれ」
『へへ、俺すんげぇがんばれる気しかしない』

お昼の約束をしただけなのに、急にやる気をみせて真剣な目で画面を見る。
その姿を見て、私も自分の仕事に手をつける。

両隣がいないデスクワークは、開放感はあるけど少し寂しい。
デスクにはってある山田くんからの大量の付箋。絵は...あんまり上手じゃないのかな。

でもそれを見ると、不思議と口角があがってしまう自分がいる。
なんでだろう、この絵を見てるだけで安心するっていうか。

『あ、12時だ！』
「ほんとだ」
『テラスいこいこいこ～！』
「うん、いこ」

12時きっかりに終えて、財布と携帯をもって私のもとへやってきた。
今にも溶けそうなくらいの笑顔で。

そんな大貴をみると私もニヤニヤしてしまう。
気持ち悪いのはわかってるんだけど。

『いこっか』
「うん。」

久しぶりに大貴と二人でご飯を食べる。
なんだかデートみたいって一人で浮かれてるのは

誰にも内緒の話。

・