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リビングには全員いた。俺以外が口を挟まないのはユンギヒョンが言ったからだ。
「Aは今過敏な状態だから、触れるのを許したジョングク以外存在を示すな」と。
随分な言い方だと思ったが、ユンギヒョンだからわかる面もあるのだろう。皆抗議せず承諾した。

だから黙っている。けどその面持ちは勿論穏やかじゃない。今にも飛び出して人を殺しに行きそうな顔をしている。

疑うほどいいやつで、アホみたいに優しくて、好意を隠さずに伝えてきて、アイドルやるとか絶対向いてないだろって思わせるのに、同時に一緒にステージに立ちたい、活動したいって思わせる。

そんなAが辱めを受ける理由なんて絶対に無い。


「明日も、学校行くの」

「うん、終業式だから」


そうか、そんな時期か。帰りも大分早いしなんなら俺が迎えに行くこともできる。

俺は繋いでいる手を強めに握り、明日迎えに行くと伝えてみた。
Aは驚いた顔をして、いいのに、と遠慮がちに呟く。


「でも話したい人がいるから、少し遅れるかも」

「わかった。上にコート羽織って行くかな」

「嬉しい。グガのコート姿好きだよ」

「……」

「……ごめん」

「え、なんで」人を褒めること、及び照れさせることに対して謝ってきたのは初めてだ。

「いや、その、……主犯格であってるかな。主犯格の子が、僕に言ってきたんだ。お前のそういう……媚売る言い回しが気持ち悪いって」

「……戸惑いはするし、なんだこいつって思うけど気持ち悪いとは全く思わない。俺と、多分、ここにいる全員」


Aは長い睫毛をぱちんと上に向けると、俺の言い方の意図を探るように唸ってから、悪いことは言われてないのかな、と一人納得した。

そしてその時初めて皆の表情に気づいたらしく、小さく声を漏らす。


「ひっ、ひょ、ヒョン達なんて顔してるんですか」

「あんな話聞かされて、平気な顔してられると思ってたの?」口を塞ぐ皆の代わりに俺が言った。

「……他人事なのに?」


心臓がぐらりと揺れる。他人事? そんな澄んだ目で、お前は自分が俺たちにとって他人だと思われていると、そう思ってるのか。

他人でも胸糞悪い話だ。
それが大事なメンバーに起こってどうして平然としていられる。


「……明日、絶対勝手に帰るなよ」


疑問と不満が入り乱れ、機嫌の悪い声が出た。
目の前のAが頷くのを見てから、俺はようやく眠気を思い出す。

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- 性被害後の処理の方向が驚きでした。完結までもっていってくださりありがとうございます。お疲れ様でした。 (2021年8月5日 3時) (レス) id: 95434f44d3 (このIDを非表示/違反報告)
ぼく(プロフ) - 虞犯少年さん» リクエストさせて頂けて光栄です、新しい作品の方も毎日毎分まだかまだかと更新楽しみにしております(笑) (2019年1月3日 16時) (レス) id: a099ebec59 (このIDを非表示/違反報告)
虞犯少年(プロフ) - 猫わかめさん» そんな素敵な言葉をいただける作品を書けたことを嬉しく思います。読んで下さりありがとうございました。 (2019年1月3日 14時) (レス) id: 3f60c9b07f (このIDを非表示/違反報告)
猫わかめ - 感動しました。次へ、次へと、手が止まりませんでした。素敵な小説をありがとう。そして、完結お疲れ様でした (2018年12月31日 17時) (レス) id: abf16c0298 (このIDを非表示/違反報告)
虞犯少年(プロフ) - ぼくさん» ありがとうございます。まさにそう思われる作品を目指していたので、本当に嬉しいお言葉です。いいですね、短編でやってみたいです。 (2018年12月29日 14時) (レス) id: 3f60c9b07f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虞犯少年 | 作成日時:2017年10月7日 22時

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