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「トイレで……こう、手を……一つにされて……僕は見た目だけはいいから、体貸せば、僕の顔と物は傷つけないって」
「……それで」
「最初は脱ぐだけだったし、少し、その……触ったり触らせたりしたら、いいって。体叩かせたり。いわゆる……最後まではされなかった」
「……」
「……でも、この前は違くて、いつもより人数が多くて、去年いた先輩も来たの。縛られて、あれなんて言うのかな……色々言われながら、されて」
Aは追憶して身体を震わせる。
パジャマに包まれた身体には数多の傷がある。俺の手を握りながら、Aは自分にできうる限りの表現で言葉を連ねる。実際は俺が手を握ってるんだけど。
「痛くて、苦しくて、首絞められたり、首のとこ吸われたり、体噛まれたりした。それからここ数日、毎日」
「……何か、きっかけとか、あったの」
「……全部の始まりは、僕は、言葉がわからなかったことだと思ってる。悪口とか、わからないじゃん。文化も。だから勉強した。そしたら言ってることがわかって、苦しくて、やめてって言った」
頷くことしかできない。決して肯定ではない、ただ、話を聞く意志だけは伝えたかった。
Aは生乾きの前髪をゆらゆら揺らしながら、少し日焼けしている指先で俺の手を揉みながら話す。
「そしたら、抵抗？ するのが良いって。僕よくわかんなくて、やめてとか、言わせたいみたいで、終わんなかった。僕力弱いし運動もできないから、言葉って武器持ってったのにね」
苦しそうに言った。解放されるために携えた武器を鼻で笑われた瞬間の絶望は想像できない。
「抵抗しろって言うんだよ。最初はしたさ。普通に、嫌だったから。でもだんだん慣れて、しなくなった。今度は向こうが抵抗させるために、もっと酷いことしようってなった……らしい。演技力あったら良かったのかな、あはは」
「笑うなよ、下手くそ」
「……ごめん」
「謝れっつってないだろ」ソファで隣に座るAの顔を覗く。俯きがちなAの目がちらりと俺を向いて、俺を見て、閉じた。
「悪い癖だ」
微かな自己嫌悪。Aの呟きに含まれたそれに俺は目敏く気がついてしまい、A、と彼の名前を呼ぶ。
Aは人形的な微笑みで、大丈夫、と答える。
大丈夫。俺はその言葉が嫌いになりそうだった。そう言えば、Aは容易く自分を隠せてしまえるから。
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
触 - 性被害後の処理の方向が驚きでした。完結までもっていってくださりありがとうございます。お疲れ様でした。 (2021年8月5日 3時) (
レス) id: 95434f44d3 (このIDを非表示/違反報告)
ぼく(プロフ) - 虞犯少年さん» リクエストさせて頂けて光栄です、新しい作品の方も毎日毎分まだかまだかと更新楽しみにしております(笑) (2019年1月3日 16時) (レス) id: a099ebec59 (このIDを非表示/違反報告)
虞犯少年(プロフ) - 猫わかめさん» そんな素敵な言葉をいただける作品を書けたことを嬉しく思います。読んで下さりありがとうございました。 (2019年1月3日 14時) (レス) id: 3f60c9b07f (このIDを非表示/違反報告)
猫わかめ - 感動しました。次へ、次へと、手が止まりませんでした。素敵な小説をありがとう。そして、完結お疲れ様でした (2018年12月31日 17時) (レス) id: abf16c0298 (このIDを非表示/違反報告)
虞犯少年(プロフ) - ぼくさん» ありがとうございます。まさにそう思われる作品を目指していたので、本当に嬉しいお言葉です。いいですね、短編でやってみたいです。 (2018年12月29日 14時) (レス) id: 3f60c9b07f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：虞犯少年 | 作成日時：2017年10月7日 22時
