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水蒸気が脱衣所に流れ込む。
相当リラックスできたのか、疲れもあるのだろう、普段なら考えられないことをAはしている。
Aは人前に素肌を晒すことを極端に拒む。
着替えも近頃は俺の前で行わなかった。
だというのに、Aは一糸纏わず浴室から現れ、傷だらけの白い肌を眠そうな眼のまま露わにして、ぼんやりと生気の抜けた顔でいた。
「お風呂、でました」
「……」
「あ、ごめんなさい、汚いですよね、体。すぐ、着ます……」
「お前……っ」
鎖骨辺りには鬱血痕が幾多もあり、首や腕には細い縄の痕が目立った。下腹部周辺には殴られたような痕、太腿には噛み痕。細かい切り傷は数え切れない。地の肌が綺麗な分、見た側に与える感情を歪なものにさせる。
大股で踏み出した。Aの手首を掴む。怖がらせちゃいけないってジミニヒョン言ってたのに、頭が働かなかった。強く掴んでしまうとAは焦点を合わせられなくなったように、息を震わせて呟く。
「ご、めん……なさ……」
「どうして、もっと、もっと早く」感情が溢れる。顔を近づけて覗き込んで問いかける。Aは俺を見ない。見ていない。
「っ、やめて……！」
拒絶する言葉に対してその抵抗は弱い。指先で相手を押す程度の抵抗に、俺は普段のこいつを想像した。
男相手にこれなんて、抵抗にもならない。
「あ、……ごめん、グガ」
「謝んなくていい。何されたんだよ、言って、ちゃんと」
「なに……なんでも、ないって」Aは手近なタオルを取ると体を簡単に隠す。
「……じゃあ、これは？」俺は首回りのキスマークを撫でた。ガキがつけた不恰好な内出血の痕に、吐き気がする。
「……」誤魔化す言葉が浮かばないのかそっぽを向いた。
Aは馬鹿じゃない。ここらが潮時なのもわかってるんだろう。
それでも、喉を掴まれているように、口を塞がれているように、次の言葉を出せそうじゃなかった。
「……少しね」
「ちゃんと、言え」
「だって、」
「気持ち悪いなんて思わないから」
目を見て、精一杯に優しく言った。
だって俺はお前の、友達なんだろ。
Aは目を丸く見開いて、泣きそうになって、でも涙は流さないで、笑った。
「……ジョングガは、僕のヒーローだ」
俺ならAの側に踏み入れる。
シャワーの温もりが少し残ったAの体を抱きしめて、その背中の大きな傷を見た。一人にしない。もう、寂しい思いは十分したろ。
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触 - 性被害後の処理の方向が驚きでした。完結までもっていってくださりありがとうございます。お疲れ様でした。 (2021年8月5日 3時) (
レス) id: 95434f44d3 (このIDを非表示/違反報告)
ぼく(プロフ) - 虞犯少年さん» リクエストさせて頂けて光栄です、新しい作品の方も毎日毎分まだかまだかと更新楽しみにしております(笑) (2019年1月3日 16時) (レス) id: a099ebec59 (このIDを非表示/違反報告)
虞犯少年(プロフ) - 猫わかめさん» そんな素敵な言葉をいただける作品を書けたことを嬉しく思います。読んで下さりありがとうございました。 (2019年1月3日 14時) (レス) id: 3f60c9b07f (このIDを非表示/違反報告)
猫わかめ - 感動しました。次へ、次へと、手が止まりませんでした。素敵な小説をありがとう。そして、完結お疲れ様でした (2018年12月31日 17時) (レス) id: abf16c0298 (このIDを非表示/違反報告)
虞犯少年(プロフ) - ぼくさん» ありがとうございます。まさにそう思われる作品を目指していたので、本当に嬉しいお言葉です。いいですね、短編でやってみたいです。 (2018年12月29日 14時) (レス) id: 3f60c9b07f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：虞犯少年 | 作成日時：2017年10月7日 22時
