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頬杖をつき、周囲には鮮やかな混じり気のない絵の具が飛び散る。視界に鮮烈さを与えるのに、中央右寄りの男性の顔は至極憂鬱というか、無情にも近い。

忠実に自分を見ていたんだろう。よく似ている。前髪が緩くカールして、長くて、隙間から覗く大きな瞳に一瞬の光が差し込んだ様子。
中性的で、何を考えているのかわからない。
モナリザを見たときに受ける印象にも似た、不可解なまま精神の核を突かれた瞬間。


「特選。僕、表彰されたの久しぶり」


Aはジニヒョンの腕を離れると、ジョングクに絵を見せてきますと言ってキッチンを出た。
俺は慌てて部屋に戻り、素知らぬふりをしてゴロゴロしていた。

宣言通りAは絵を見せて、その次に賞状を見せて、笑う。ハングルで化野Aと書かれている賞状を、本当に愛しそうに持って。


「すごいじゃん、A」

「へへ、ありがとう。君に言われると元気でる」

「別に、俺じゃなくても」

「芸術に触れている人に褒められることはすごく嬉しいよ。グギはアイドルな訳だし、映画も見るし」

「アイドルってお前もだよ?」

「わ、わかってる。アイドルだよ。うん」


表彰式くらいで緊張しちゃだめだよね、と独り頷くA。それは別にいいんじゃないか。賞を貰うのは、何度だって緊張して喜ぶもんだろ。多分。


「君は笑うかもしれないけどさ」唐突に、Aは話し出した。「僕、色んな賞取りたい」

「……笑うも何もザックリしすぎ」

「ざっくり?」

「えっと、こう、雑? あっさり、具体的じゃなさ過ぎ」

「あぁ……うん、そうだよね。なんて言うんだろ、日本だとレコード大賞なんだけど」

「大体わかるよ」


わかる上で高望みでもあると思った。夢のないガキっちゃガキなところあったから、俺は程よくちやほやされたらそれでいいと思っている。

いや、思っていた。
防弾少年団として過ごしていくうち、Aの言うような欲は確かに湧き出ていたのだ。


「だから、こんな日もあったなって後で笑えちゃえばいいんだ。少しくらい痛くても、苦しくても……大したことない」

「……」

「僕は死なないし、壊れないよ」

「!」


見透かされた。
Aには何が見えているんだろう。


「高いところも怖くない。階段も、うん、少し怖いけど、日常生活に支障なし。気にしないで? あ、でも耳の傷は気になるかも」


翳りのない笑みが俺の目に届いて、見惚れた。

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- 性被害後の処理の方向が驚きでした。完結までもっていってくださりありがとうございます。お疲れ様でした。 (2021年8月5日 3時) (レス) id: 95434f44d3 (このIDを非表示/違反報告)
ぼく(プロフ) - 虞犯少年さん» リクエストさせて頂けて光栄です、新しい作品の方も毎日毎分まだかまだかと更新楽しみにしております(笑) (2019年1月3日 16時) (レス) id: a099ebec59 (このIDを非表示/違反報告)
虞犯少年(プロフ) - 猫わかめさん» そんな素敵な言葉をいただける作品を書けたことを嬉しく思います。読んで下さりありがとうございました。 (2019年1月3日 14時) (レス) id: 3f60c9b07f (このIDを非表示/違反報告)
猫わかめ - 感動しました。次へ、次へと、手が止まりませんでした。素敵な小説をありがとう。そして、完結お疲れ様でした (2018年12月31日 17時) (レス) id: abf16c0298 (このIDを非表示/違反報告)
虞犯少年(プロフ) - ぼくさん» ありがとうございます。まさにそう思われる作品を目指していたので、本当に嬉しいお言葉です。いいですね、短編でやってみたいです。 (2018年12月29日 14時) (レス) id: 3f60c9b07f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虞犯少年 | 作成日時:2017年10月7日 22時

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