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そしてこちらを振り返り、おずおずと、言葉の真意を測るように静かに俺を見る。
「……見たくないでしょ？」
「見たくはないけど、気持ち悪いとか思わないし。普通に心配してんだよ。こっちは」
「君、僕と年違ったっけ」
「はぁ？ 同じだよ。97。なんか関係あんの？」
Aはまだ俺を見る。そして微笑みながら視線を落とし、微笑んで、
「変なの」
と言って、着替え出した。
◇
「僕が韓国に来たのはだいたい二年前」
Aが箸片手に口を開いた。声質はテヒョニヒョンに似ていて、少し高い。柔らかい声。
「事故で、お父さんもお母さんも死んじゃった」
「……」
「母方のおばあちゃんは韓国の人で、だから来たんだ。住んだ、暮らしてる……」
話してもいい相手だと認識した瞬間警戒が取れたのか、Aはぽこぽこ話し始めたが、たった二行程度の文章になかなかの人生が詰め込まれていた。
しかし余計に疑問は増えるばかり。
箇条書きにすれば軽く十個はいきそうなレベル。
「……事故の傷って、背中のだけ？」
「ん、多分。他のはだいぶ薄いから」
「……おでこのあざと首のかさぶた、耳の切り傷……その口の横。それは古傷じゃないってこと？」
ぴたり、と。動きを止めて、Aは左手の親指を自分の口に寄せて、傷口を撫でた。
記憶を呼び起こすような、押し戻すような、そんな動作。
そうして、目を伏せた。
「……A、」
「おいこらマンネどもー！ さっさと食べおわんないと遅れるよ！ 遅れたらペナルティだかんね」
忘れ物でも取りに来たのか、ホソギヒョンがばたばたと部屋に立ち入る。俺たちよりも先に、振付師と打ち合わせでもするのだろう。
ホソギヒョンは俺を見て、Aを見て、額をつんとつつく。
「わっ！！」
「はーやーくーたーべーろー」
「ひぃ……ごめんなさい……」
Aはダンスの覚えが遅い。早めに行って自主練するのが恒例になっているらしく、ダンスリーダーに急かされ頬を引きつらせた。
じゃ後で、ホソギヒョンがパタンと出て行く。
「……嵐のような人」
「嵐？ まぁ……わかる。喋んないときはユンギヒョンより喋らないし」
「じゃあ夕立かな」
「夕立……ね。意外と言葉知ってんのな」
俺が言うと、Aはふるふる首を横に振った。
そうして、後悔すら滲ませて吐き捨てる。
「知ってたらここにいなかったよ」
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触 - 性被害後の処理の方向が驚きでした。完結までもっていってくださりありがとうございます。お疲れ様でした。 (2021年8月5日 3時) (
レス) id: 95434f44d3 (このIDを非表示/違反報告)
ぼく(プロフ) - 虞犯少年さん» リクエストさせて頂けて光栄です、新しい作品の方も毎日毎分まだかまだかと更新楽しみにしております(笑) (2019年1月3日 16時) (レス) id: a099ebec59 (このIDを非表示/違反報告)
虞犯少年(プロフ) - 猫わかめさん» そんな素敵な言葉をいただける作品を書けたことを嬉しく思います。読んで下さりありがとうございました。 (2019年1月3日 14時) (レス) id: 3f60c9b07f (このIDを非表示/違反報告)
猫わかめ - 感動しました。次へ、次へと、手が止まりませんでした。素敵な小説をありがとう。そして、完結お疲れ様でした (2018年12月31日 17時) (レス) id: abf16c0298 (このIDを非表示/違反報告)
虞犯少年(プロフ) - ぼくさん» ありがとうございます。まさにそう思われる作品を目指していたので、本当に嬉しいお言葉です。いいですね、短編でやってみたいです。 (2018年12月29日 14時) (レス) id: 3f60c9b07f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：虞犯少年 | 作成日時：2017年10月7日 22時
