6話 ページ7
sideA
【もう二度と戻ってこないでね。僕の可愛いA…】
そう言ったのは茶色の髪が特徴的な男性。
私はこの人を良く知ってる。
その手を離さないで…！
A『兄様!!……』
慣れない布団と普段聞こえない鳥の声で目が覚める。
A『……にい…さま……』
またこの虚しい空虚感を感じなければいけないなら
堕ちるとこまで堕ちてしまいたい。
兄がこの世に残したのは楽器と楽譜と残像だけ。
遺体もないのに亡くなったことにされ、
何も入っていない墓を訪ねるのが習慣。
A『……』
朝から憂鬱になりつつも合宿は続きます。
柴咲｢みんなー！はぐれないようにねー！｣
御本尊を見て圧倒されつつ
兄にまた会えるようにお祈りをする。
浅霧｢神咲ちゃんは何をお願いしたの？｣
A『人様に言うと効果が無くなると言われてますので。』
浅霧｢なに？首席になれますよーに？｣
そんなわけ。
A『神様に頼るくらいなら退学した方がマシです。』
浅霧｢辛辣〜。｣
A『紫音、浅霧さまが…』
三毛門｢やめてよね。次Aにちょっかい出したらタダじゃおかないから。｣
浅霧｢2人して冷たくなーい？｣
浅霧｢で？結局なに？｣
諦めてください。
A『次は白華さまか会長様に連絡入れますよ。』
浅霧｢そんなに言いたくないの？｣
言いたくないです。
A『お願いを言うくらいなら、この命が朽ち果てた方がマシです。』
口をあんぐり開けてキャンディ落としましたよ。
ちゃんと後でティッシュか何かに包んでゴミ箱に入れてくださいね。
浅霧(……どんなお願いだよ……)
ライブは白寮の逆転優勝。
A『あの人、来る時は来るんですね。』
三毛門｢ホント。久しぶりに見た。｣
白寮寮長の虎澤一生。
A『会えてよかったですね。』
浅霧｢意地悪だネ〜。｣
貴方に言われたらお終いですが…
夢見悪いので仕方ないと致しましょう。
白華｢……｣
白華(……あの人の夢でも見たんだろうか……一応、会長にも連絡しておこう。)
久磨｢……｣
兄様に会いたいのに、夢で逢えたらいつも枕が濡れている。
そんな嫌な日々を投げ出したい。
でも、紫音と白華さまが止めるでしょう。
A『逆だったら良かったのに…』
三毛門｢？何のこと？｣
A『いいえ。独り言です。』
白華さまとすれ違う際、
白華｢俺も会長も逆は望んでいません。｣
って言われました。
地獄耳ですね…こわ。
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作者名：ペテン師 | 作成日時：2019年3月11日 1時
