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車を運転している時に、左列の奴がクラクションを鳴らした。かなりの勢いでハンドルを打ったらしい。キャロルと俺が無言の車の中で反応した。思わずそいつに目を向けてみると、助手席には黒のタンクトップを着たゴツい男と、運転席には痩せたブロンドの女が座っている。
「馬鹿だな、あいつ。今をいつだと思ってるのか知らねーが、冬なのにタンクトップって」
俺は鼻をこすって失笑を浮かべた。まるで夏炉冬扇じゃないか。
キャロルは緑の汚い車を凝視し、ボックスに手を伸ばした。取り出したのは、ひとつの大きな封筒だった。昨日、市役所から持って帰ったものだ。俺はぽかんとして、
「おいおい。まさか……」
「そのまさかよ。
見て。車のナンバーが同じなのよ。270のLRY」
キャロルの言ったナンバーを順に辿り、オンボロ車のナンバーが一致することを確認する。まさかこんな所で出くわすとは……。
「名前は、アリア・フローレンス。助手席の男は……、多分コイツよ。ゴードン・マックス」
ペラリと何枚のコピー用紙を捲って出て来た男を、脳内に焼き付ける。肌がフォクシー・ブラウン色にまで焼けていて、ぎょろりと真っ白な目玉がふたつ。B5の鉛筆で悪戯書きしたような黒目は印象的だ。鼻は低く大きく、また唇との距離がそう遠くない。唇から垣間見える内側のピンク色の口内は、顎につく脂肪に引っ張られているらしい。写真に肩が収まっていない。ここからでもわかるが、相当な巨人だ。
「ジェームズに電話をしてくれ。奴等を追跡してみる」
「気付かれない?」
「俺はこの仕事をして、追跡の仕事が一番得意だって自負してるよ」
キャロルは一度は携帯を取り出したものの、俺の発言を聞いて「本当?」とも言いたげな目をして可愛らしく腕を組んだ。目がくりっとこちらを熱視している。
「15年以上のベテランさんだ。言うことを信じてもらおうか。女王様」
信号が変わり、アクセルを踏む。キャロルは分かったわよ、と携帯のスイッチを入れて画面に触れた。それを見た後、視線を横のオンボロ車に狙いを定める。
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あに(プロフ) - いえいえ。こちらこそ、お忙しいところ申し訳ありません。 (2015年11月1日 10時) (レス) id: b6e044a433 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - あにさん» ありがとうございます。私もコイツらのこと好きです(°▽°)/あに先生の小説の評価、遅くなって申し訳ありません。これから暫く暇になると思うので一気読みしますb (2015年11月1日 8時) (レス) id: 6298628eb9 (このIDを非表示/違反報告)
あに(プロフ) - キャラクターの台詞がとても好きです。そして、映画を見ているような感覚です。文を読むとその場の様子が浮かんできて、感動しました!このサイトではめったにこういう作品と出合うことがめったにないので……。 (2015年11月1日 0時) (レス) id: b6e044a433 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 阿吽さん» コメントありがとうございます(*´∇`*) 今振り替えると、文の羅列ばかりで配列に工夫がないような……。でも今のバランスなければ凄いという言葉は出ないはず。難しい所ですね。 読んでくださってありがとうございました! (2014年11月5日 23時) (レス) id: 5c4ab849ae (このIDを非表示/違反報告)
阿吽(プロフ) - 凄い…!!あ、イベントに参加登録してくれてありがとうございます!!!! (2014年11月5日 23時) (レス) id: e6f590558d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイチェル・ハジェンズ | 作者ホームページ:https://twitter.com/seshiru777777
作成日時:2014年8月7日 15時