大恋愛 ―9つの絆―

6 ページ7

ar


ｺﾝｺﾝ


『はい、どうぞ』


「失礼します…」


本当に久しぶりの病院は診察室のドアを開けるだけでも緊張する

でも、何でもないって確信をもらうだけ


早く終わったらこのままどこか行こうかな
二人で行くならどこがいいかな


他のことを考えて気を紛らわせながら椅子に座った


「今日はどうされたんですか?」


「最近、物忘れがひどくて…」


自分の仕事が特殊なことを伝えてから

楽屋での忘れ物、仕事を忘れること、今まで使っていたものが分からなくなること、振り付けが思い出せないことがあったこと…

最悪の俺に起こる不可解な出来事を全部話した


話しながらでも分かった。俺の話が進むたびに先生の顔が曇っていくのが


「レントゲン撮りましょうか」


「どこのですか?」


「脳です。この後のご予定はありますか?」


「ない、です…」


「少々お待ちください。ちょっといいかな」


「はい」


放心状態の俺とは別に先生と看護師さんは何か話している


脳…?
脳って脳腫瘍とか?でも、頭なんて一ミリも痛くないし…


「じゃあ、こちらからどうぞ」


混乱が溶けぬまま、レントゲン室へ通された

7→←5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す