差し伸べられる手 ページ8
「じゃ、おやすみA」
「ん、ありがとなリナリー」おやすみ！
開けた扉から身を乗り出して、リナリーに大きく手を振る。彼女が背を向けたのを確認してから部屋に戻り、側に立つユウへと目線をうつした。
「ユウも、ありがと」
「別に、何もしてねぇだろ」
「側にいてくれてるじゃん？」
「………」
朝の出来事が蘇る。あの光景は…8年前のあの日、血に塗れた刀を握るユウと、その目前で…肉片となったアルマを思い出させた。
…心の奥底がざわつく。1人だったらきっと、思考が、心があの日の事で押しつぶされていたのだろう。
…出来ることなら、まだ1人にはなりたくない。
「…ユウ、あのさ……」
その思いを口にしようとして…言葉に詰まった。もう夜も遅い…こんな時間に彼を拘束するのは我儘だろうか。
「……いや、やっぱいいや」
「…なんだよ」
「なんでもない！おやすみユウ」
ユウの背中を押して部屋から出す。押し出された彼がこっちを振り向く前に、そそくさと扉を閉めた。
「──！？」
…つもりだったが、突然閉めかけた扉が鈍い音を立てて止まった。扉の隙間からは、力強く扉のふちを掴むユウの手。ギギギ…と強い力で押し返され、徐々に開かれた隙間からユウの睨む顔が覗く。
「今度は逃さねぇからな…」
「怖っ！？」
「いいから開けろおま…押し返すな！」
ドアに両手をつき、踏ん張りながら思いっきり押し返す。たぶんユウも向こう側で同じポーズをしているんだろう。扉がミシミシと壊れそうな音を立てている。
しばらく戦っていたけどじわじわと押され、空いた隙間からユウの侵入を許してしまった。
「はぁ、はぁ、ま、負けた…」
「テメェこんなので競おうとすんな…」ｾﾞｪｾﾞｪ
外から見たら完全に不審者だったろうなぁ…ユウ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 113人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
若葉 - お久しぶりです。今回もすごく素晴らしいものでした。いつも素敵な作品をありがとうございます。これからも楽しみに待ってます♡ (1月22日 21時) (
レス) id: 43e60307ff (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - D灰に再熱してから新しい作品を毎月探していますがやはり少ないので、こうして昔読んでいた作品を久しぶりに読み返すのですが…何度読んでもやっぱり良いですね。幾年過ぎても変わらず好きだなと感じます。 (2023年3月25日 18時) (レス) id: a0d23a714e (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ - 一気に読んでしまいました！続き楽しみにしてます^^♪ (2022年10月19日 21時) (レス) id: 7c2d0cd434 (このIDを非表示/違反報告)
もずえ(プロフ) - 若葉さん» ワーすみません！更新すっかり止まってしまっておりました…！また時間ができた時に(ゆっくりになりますが)更新しますので、思い出した時に来ていただければと…！ (2022年10月5日 14時) (レス) id: 2f26aaf540 (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - 続き、、、続きを、、、、お恵みください、、、、 (2022年9月20日 18時) (レス) @page42 id: 7981b3d9d1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もずえ | 作成日時：2021年1月23日 13時
