雌型の器ー拠り所 ページ19
咄嗟に自分の顔に触れる。…無意識のうちに自分がそんな顔をしていた事に驚く。…いやそれよりも…私のその無意識にユウが気付いた事に驚いた。
「手出せ」
「へ？」
「いいから、出せよ」
何もわからぬまま、言われたとおり手を差し出す。するとユウはその手を包むように、自分の手と重ねた。
そこで初めて…自分の手が細かく震えていた事に気付いた。
「……あぁ、私…怖かったのかな」
「……」
「誰かを助けようとしてこれじゃ……みっともないね」
「…んな事ねぇよ」
ガッと頭を掴まれた感覚がしたかと思うと、すぐに目の前に教団の十字架が見えた…。
「…無事で良かった」
心臓の鼓動が聞こえる。押し当てられている場所がユウの胸だと気がつくのに、そう時間はかからなかった。
無意識に緊張していた身体が、ふっとほぐれていく。触れている事は変わらないのに、襲ってきた男達とは違う…体を包む彼の腕は、どこか安心を覚えた。
「…ユウ、私の血ついちゃうよ」
「んなもん、洗えば落ちる」
「…早く任務行かないと」
「少しくらい大丈夫だろ」
「……ユウ」
「なんだ」
「…もうちょっと、身体貸してて…」
「……別に、いくらでも貸してやるよ」
「ふふっ…ありがと……」
彼の胸の中で心を落ち着ける。体はすっかり治癒したけど、こうして心を落ち着かせようとした瞬間なんて、思えば今までなかったかもしれない…。そう思うと、なんだか離れるのが勿体無く感じてくる。
…折角だし、しばらくこうしていよう。
＊＊
それから少し時間が経ち…。
「……」
「……A」
「……」
「…A？」
「…………zz」
「…は？おい、お前もしかして寝て……」
「ｽﾋﾟー」
「寝てんじゃねーか！！起きろテメェ！！」
「んぐ、あと5分……」
「寝んのはあとにしろ！！さっさと任務行くぞ！！」
「えっ！？だってユウ、いくらでも貸すって言ったじゃん！！」
「うっ…？！いや、そ、それは…」
「嘘ついたの！？」
「違っ…ね、寝ていいとは言ってないだろ！！つかそんだけ元気なら大丈夫じゃねーか！」
「あっバレた」
「チッ、さっさと行くぞ！」
「あぁっ、抱き枕が〜！」
「誰が抱き枕だ…！！」
そのまま廃屋を離れた私達は、捕まっていた人達を見送って列車に乗り直した。
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若葉 - お久しぶりです。今回もすごく素晴らしいものでした。いつも素敵な作品をありがとうございます。これからも楽しみに待ってます♡ (1月22日 21時) (
レス) id: 43e60307ff (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - D灰に再熱してから新しい作品を毎月探していますがやはり少ないので、こうして昔読んでいた作品を久しぶりに読み返すのですが…何度読んでもやっぱり良いですね。幾年過ぎても変わらず好きだなと感じます。 (2023年3月25日 18時) (レス) id: a0d23a714e (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ - 一気に読んでしまいました！続き楽しみにしてます^^♪ (2022年10月19日 21時) (レス) id: 7c2d0cd434 (このIDを非表示/違反報告)
もずえ(プロフ) - 若葉さん» ワーすみません！更新すっかり止まってしまっておりました…！また時間ができた時に(ゆっくりになりますが)更新しますので、思い出した時に来ていただければと…！ (2022年10月5日 14時) (レス) id: 2f26aaf540 (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - 続き、、、続きを、、、、お恵みください、、、、 (2022年9月20日 18時) (レス) @page42 id: 7981b3d9d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もずえ | 作成日時：2021年1月23日 13時
