その兄妹､悉く狂気｡【太宰治】

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全ては､あの日から始まった様に思う｡
治が､自※未遂をして､運ばれたあの日から｡
私はあの日､自分が何をしていたか､思い出すことが出来ない｡
でも､双子の兄が死にかけていたのに､
確かに私は治の元には居なかった｡
…それだけでもう､狂気の沙汰だけれど｡


"生きる意味を見付けたい｡"


そう思い始めたのも､何時だったか｡
何時から私はおかしかったのか｡
一体､誰に訊けば納得のいく答えが返ってくるのだろうか｡

中也「また彼奴の事か?」

『いや､今は自分の事だよ｡
私はきっと治より狂ってるだろうから｡』

中也「……よくわかんねェな｡」

だけど､私は何時だって誰かに理解されたかったのだと思う｡
でも私は"普通の人"という感性を持ち合わせて無いから､
私と同じ"異常"を持ち合わせて居る治にしか理解されない｡

ならば私は?
私は､治の事を何処まで理解している?
治ならこうする､というのは只の勘や予測であって､
理解しているからじゃない｡

だって現に私はあの日､治が自※未遂をした原因が未だ思い付かないから｡
私は治に何をしてあげられる?
治第一に生きたからといって､それは私の自己満足でしかない……?

中也「…おいA､顔色悪いが如何した?」

治が私の生きる意味だなんて､只の自己満足や勘違いだったら?


"何かに溺れてはいけない｡

溺れたらそれはAにとって底無しの沼になる｡

そうすればAは己ずと滅びを迎える｡"


昔､治がよく私に云っていた｡
今思い出してももう遅いのだけど｡

中也「おい､A!?」


息が上手く出来ない｡

私は如何したの?

底無し沼って苦しいの?

ずっと治はこんなに苦しかったの?






嫌だよ､治｡

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