重岡大毅、君にデレ期。

ショートショート「相合傘」 ページ49

〆．



「Aちゃん！コレ見て！」



朝、学校に着くなり友達が私に駆け寄る。

コレ、と言って指さされたのは黒板。

その端に、相合傘が書かれていた。



「相合傘？」

「よく見て！」



今どきこんなん書く人いるんだ？

感心しながら近づくと、そこには。



『重岡大毅』『神山A』



と、汚ったない字が並んでいた。

ふーん。



「誰が書いたんだろ、Aちゃん、どう？」



どうって何？

ちょっと悩んだ末に、「汚い字だな、って」と答えてみた。



「ちーがーう！重岡のことどう思ったか！」

「重岡のこと……」



そんなの、決まってる。

だいぶめんどくさい彼氏だな。以上。

付き合ってるの知られてないからまあ周りがこんなに盛り上がるのも無理はないけど。



「め……」

「おっはよー！しげちゃんに朝が来たでぇー！！」

「あ、本人登場……！」



友達はヒヤヒヤしてるけど、この字はどう見ても重岡のもの。

なんで突然相合傘書いたのかは知らんけど。



「ねー重岡。これどしたの？」



面白がるクラスメートたちの前で、重岡に問いかける。

重岡は「気付いた！？」と嬉しそうに飛び跳ねた。



「………あのさ」



急に真剣な顔し始めた。

普段ふざけまくりの人が真面目になると深刻な話だと思って聞く気失せるからやめてほしい。



「俺、夢の中でAに相合傘拒否られてん」

「……………は？」

「雨降ってて、俺傘忘れて、これどう考えても一緒に帰る流れやん！？やのに、折り畳みあるから傘貸すよ……って！！ありえへんやろ！！」

「お前だわ」



夢の中での行動は重岡が勝手に作り上げた物語なんだから許せ。

ブツブツ言う重岡は私の肩に腕を回す。



「相合傘書けば、Aもその気になるかな？思って！」

「せめて雨の日に書いて？」

「日傘……」

「重岡にはもうちょい焼けてほしいから却下」



私たちのやり取りに、みんな目が真ん丸。



「相合傘してくれな、俺悲しくて夜寝られへん！思わずAに鬼電してまう！！」

「うわ、嫌だ。晴れの日の相合傘はもっと嫌だ」

「え、何二人付き合ってるの？」



その言葉に、重岡はにんまり。

次の瞬間、どこから取り出したのか傘を開いた。



「見てのとーり♡」

「これ相合傘やん、はい完了」

「いやあああああ！！！！！！！」



〆．

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