Episode 32 ページ35
幼い頃の生活の中でついたこの痣は、もう痛みは無いはずなのに私にギリギリと当時の記憶を思い出させる。
あんな地獄のような日々…一刻も早く忘れ去りたい。
だけど、この痣は私があの時の記憶を忘れようとするのを阻止するように消えずに存在し続ける。
忘れようと必死に藻掻く私をあざけ笑うかの如く。
鏡の前で悶々としていたが、赤井さんを待たせていたことを思い出し、タンスの中から数少ない首が見える服を選んで着ると、リビングへと戻る。
私の足音に気づいて振り返った赤井さんの視線が一瞬にして首元に注がれる。
その視線に含まれた感情をみて記憶が蘇る。
そうだ、この痣を見た人は皆こうだ。
みんな…みんな、可哀想なものを見るように…哀れむかのように…
違う、私はそんなの望んでない。
同情してほしい訳じゃない。
私は、ただ…普通に、他の子と同じように…
やめて、そんな目で見ないで
私が何をしたって言うの?
どうしてそんな顔をするの?
ねぇ、ねぇ、ネェ?
ワタシは可哀想ナ子じゃナイヨ?
負の感情に呑み込まれかけたとき、ふとジンさんのことを思い出した。
『てめぇのその首の痣は、てめぇが闘った証拠なんだな』
満月の光に照らされた私の首を見て、何気なく零されたその言葉は、私を一瞬にして黒い淀みからすくい上げてくれる。
きっと、あの人は何も考えずに言ったことだろう。
気まぐれで助けた少女にただ感想を言った迄。
そんな言葉ですら、当時の私には嬉しかった。
そして…今も…
私は赤井さんに向き直ると、この痣について語り始めた。
同情を誘うような昔話は嫌いだけれど、あの人の言葉を思い出すだけで、誇らしくなれる。
私はなんて現金な女なんだろうか。
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あいか(プロフ) - はじめまして、あいかともうします!この小説の続きが気になるので早めの更新頑張ってください!! (2017年7月30日 16時) (レス) id: 70607cf5f4 (このIDを非表示/違反報告)
のんたん(プロフ) - ゆらさん» コメントありがとうございます!頑張って更新します! (2017年6月8日 19時) (レス) id: 8bc9afdc49 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら - すごく面白いです!続き楽しみにしてます♪ (2017年6月8日 12時) (レス) id: 536a82edec (このIDを非表示/違反報告)
のんたん(プロフ) - 紅蓮さん» ありがとうございます!コメントいただけるだけで執筆に俄然やる気が出ます!!頑張ります!! (2017年3月7日 0時) (レス) id: cf32376341 (このIDを非表示/違反報告)
紅蓮(プロフ) - 続き楽しみに待ってますm(。≧Д≦。)m (2017年3月7日 0時) (レス) id: 219aa5a094 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のんたん | 作者ホームページ:
作成日時:2017年2月19日 11時