第4話 新一へ ページ5
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電話はかけるけど、繋がらないのだ。
たったそれだけの答えなのに、コナン君の大きな瞳を見ていると、なんだか言い辛くて私は黙って首を横にふった。
「…新一兄ちゃんと、仲悪いの?」
「ううん違うよ。あ…それより新一なんて言ってたの? まさか『テストで悪い点とるなよ』なんて言ってたとか」
コナン君は何かを考えていて私の言葉が聞こえなかったのか、数秒ジッと私の目を見ていた。私が呼びかけると「あ」と言って、あの子どもらしい可愛い笑みを浮かべた。
「えっと…風邪引くなよ…って、言ってたよ!」
「フフッ、やっぱそんなのだと思った。ありがとうねコナン君」
幼馴染だからといっていつも気にかけてくれる。新一らしいと思う反面、なんだか他人行儀で少しだけ物寂しいような気もした。
そこで私はふと良い事を思いついて、立ち上がる前にコナン君に自分から話を振った。
「あのさコナン君、新一に伝言頼んでも良いかな」
「うん! もちろん!」
「じゃあ…早く、帰ってきてねって。いっぱい話したいことあるんだから…」
私はそれだけでは終われず、「あ、あと…」と未練がましく付け足した。
「怪我しないで、それに、無茶もしないで…」
新一に言いたいことなんて、山ほどある。それでも言葉を選んだつもりだったのに、気がつけば私は新一に向かって話している気持ちになっていて、伝言じゃなくなっていた。
「…帰ってこれなくても、たまには…たまには声くらい聞かせて欲しいって……」
新一への言葉を考えていると、段々寂しさがドッと胸に押し寄せてきて私は言葉を止めた。
「あ、ごめん、こんな長いの覚えられないよね。えっと…」
「……ううん、覚えたよ」
コナン君の明瞭な声が耳に届き、私は俯いていた顔を上げた。何故かコナン君まで切ない表情をしているようにみえた。
「大丈夫。ボクが、必ず伝えるから」
その一瞬。そう言い切った彼の強い眼差しが新一のものに重なってみえた。
「だから安心していいよ!」
「あ、う…うん…そっか、ありがとうコナン君」
「ううん、どういたしまして」
にっこりと笑顔を浮かべるコナン君は、やはり小学生そのもので、私はうっかり新一に重ねてしまったのを思い出して、フッと笑ってしまった。
新一に会えたわけじゃないのに、コナン君に伝えると、本当に新一に届きそうな気がした。彼は初対面の小学生だというのに。
なんだか久しぶりにとても気分が晴れていた。
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FenGkaz710(プロフ) - 2章楽しみ (2020年6月16日 19時) (レス) id: 760679ded1 (このIDを非表示/違反報告)
琴葵(プロフ) - 面白すぎたのでシリーズ化していると思いました……。面白過ぎます!!!更新応援しています!!!シリーズ化大希望です!!!!! (2019年12月6日 3時) (レス) id: b0ea0349a7 (このIDを非表示/違反報告)
Akiko Tanei(プロフ) - 首を縦に触るのではなく、『振る』ではないですか? (2019年9月8日 11時) (レス) id: acbd1e9f39 (このIDを非表示/違反報告)
? ????? ?(プロフ) - 第1章おつかれさまでした!すごくすごく続き楽しみにしてるので更新早くして欲しいです(>_<) がんばってください!!♪ (2019年8月9日 1時) (レス) id: e7d5c65650 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにー(プロフ) - 茅架さん» 作者様本人ではなくすいません。その文書は合っていますよ!"違わず"というのは"たがわず"と読み、間違わずと言う意味です。 (2019年8月1日 1時) (レス) id: 2d86003c92 (このIDを非表示/違反報告)
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