第25話 新一の声 ページ26
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気がつけば、私はコナン君と一緒に地面に座り込んでいた。
断続的に頭に焼きついた記憶は、コナン君が私の手を引っぱってくれたことと、蘭と園子の悲鳴、バイクの急ブレーキ音。
そして何より、死を予期した私の耳に届いた新一の声。
「A! A!!」
耳に怒鳴り声が飛び込んできて、私はびくりと肩を震わせて前を見た。そこには血相の変わったコナン君の顔。「はい」と思わず返事をしてしまった私を見て、一応の無事を確認できたからか、コナン君はホッと胸を撫で下ろした。
「こ……コナン君……助けて、くれたの…?」
「う、うん。咄嗟に身体が動いて…」
死にかけたせいか、腰が抜けて私は暫く立てなかった。そばに駆け寄ってきた蘭と園子が口々になにかを聞いてくれるものの、何一つまともに受け答えできなかった。
それからすぐに警察がやってきて、バイクの運転手は飲酒運転だったらしくその場で逮捕され、私達は小一時間事情聴取や確認を受けた後、大きな怪我もなかったので解放された。
「A、痛いところない? 無理しないで今日は休んだ方がいいんじゃ…」
「ううん、膝擦ったぐらいでバイクには全然当たってないから…コナン君は大丈夫?」
「うん。A姉ちゃんが無事で良かったよ」
私はまだうまく回らない頭で、先程の光景を思い起こそうとしたが、うまく思い出せなかった。しかし、コナン君が、まるで別人に思えたのだけはうっすらと記憶に残っていた。
「さっき…」
新一がそばにいなかったか、と言いかけて私は踏みとどまった。こんな馬鹿みたいなこと聞ける状況じゃないっていうのに。
でも、一番近くにきたコナン君なら何か知っているかもしれないと考え、私は頃合いを見計らって密かに話しかけた。
「コナン君さ、さっき…」
「どうしたの?」
「変なこと聞いてるのは十分わかってるんだけど……さっき…新一みたいな人、見なかった?」
「え?」とコナン君は驚いた顔を見せた。そりゃそうなるはずだ、と私は場違いな質問をした事で恥ずかしい気持ちになった。
「あー、やっぱ勘違いだったみたい。ごめんね」
待たずとも知れているコナン君の答えを遮る。
きっと、コナン君が私に「A」と叫んだせいだ。
そう考えた時私は、ハッとしてコナン君を見た。
そうだ。あの時のコナン君、新一に似てたんだ。
『Aッッッ!!』
記憶の新一の影が揺らめいて、目の前のコナン君と重なってみえた。
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FenGkaz710(プロフ) - 2章楽しみ (2020年6月16日 19時) (レス) id: 760679ded1 (このIDを非表示/違反報告)
琴葵(プロフ) - 面白すぎたのでシリーズ化していると思いました……。面白過ぎます!!!更新応援しています!!!シリーズ化大希望です!!!!! (2019年12月6日 3時) (レス) id: b0ea0349a7 (このIDを非表示/違反報告)
Akiko Tanei(プロフ) - 首を縦に触るのではなく、『振る』ではないですか? (2019年9月8日 11時) (レス) id: acbd1e9f39 (このIDを非表示/違反報告)
? ????? ?(プロフ) - 第1章おつかれさまでした!すごくすごく続き楽しみにしてるので更新早くして欲しいです(>_<) がんばってください!!♪ (2019年8月9日 1時) (レス) id: e7d5c65650 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにー(プロフ) - 茅架さん» 作者様本人ではなくすいません。その文書は合っていますよ!"違わず"というのは"たがわず"と読み、間違わずと言う意味です。 (2019年8月1日 1時) (レス) id: 2d86003c92 (このIDを非表示/違反報告)
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