第22話 彼のシルエット ページ23
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「!!」
新一だ。
数ヶ月ぶりに直接耳にした新一の声に、爆発したように言葉が溢れ出た。
「本当に、事件のこともなにもかも…! どうして、何も言ってくれなかったの。これ以上誤魔化さないでよ…!!」
頭の中で糸が絡まり言いたい事がぐちゃぐちゃになって、口から出てくるのは間抜けな言葉の羅列だった。
新一も情けないと思っているかもしれない。それよりもまず騙されている私をみて新一はどう思っていたんだろう。
止まったはずの涙がまた溢れ出した。喉が詰まって、泣き声を角の向こうにいる新一に聞かせないように息を精一杯ひそめる。
すると、角から奥の壁に突然パッと角から明かりがついて、真ん中に新一の影が伸びていた。
久しぶりに見た新一のシルエットに私は言葉を忘れて壁の影をみつめた。
「A…聞いてくれ。オレは…無実だ」
「し……」
「だから泣くな」と新一の言葉が続く。どうして泣いていることに気がついたんだろう。彼には何でもお見通しなのだろうか。
「…な…泣いてない…」
「バーロ、突然喋らなくなりゃ誰だってわかる……オメーに泣かれると……オレが困るんだよ…」
「困る…?」と私は涙を忘れて聞き返した。
しかし、新一はそれ以上自分が無実の理由だとか私が泣いて困る理由の何もかもをあやふやにして、「とにかく、そーいう事だから…」と片手を上げた。
「じゃあな!」と軽々しく言って角のその先へ走り去っていく。影が角の向こうへ消え去ったのを見て私は慌てて追いかけた。
「し、新一! って…わ!」
角の先にいた車に驚いて足を止める。車窓からひょっこりと顔を出した阿笠博士。二度驚かされた私に、「おお、A君!」と阿笠博士が笑顔を見せた。
「新一君なら赤い顔して、向こうに走ってったぞ!!」
「赤い顔…?」と聞き返す。『オメーに泣かれると、オレが困るんだよ』と言った新一の言葉が脳裏に蘇り、私は「まさか…」と思わず口にした。
そんな期待はもうよしたほうがいい。そう思うのに、どうしようもなく胸がドキドキとしてくる。
するとやってきた蘭が「Aー?」と私に声をかけてくる。新一を追おうとした足を止めて、私は振り向いた。
「どうだった?」
「あ…新一、向こうに走っていっちゃって…」
「そう……また逃げたのね。いいわ、今度会ったら…次こそ……」
そう言って指の骨を鳴らした蘭の向こうから、次は赤木さんが蘭を追って慌ただしくやってくるのだった。
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FenGkaz710(プロフ) - 2章楽しみ (2020年6月16日 19時) (レス) id: 760679ded1 (このIDを非表示/違反報告)
琴葵(プロフ) - 面白すぎたのでシリーズ化していると思いました……。面白過ぎます!!!更新応援しています!!!シリーズ化大希望です!!!!! (2019年12月6日 3時) (レス) id: b0ea0349a7 (このIDを非表示/違反報告)
Akiko Tanei(プロフ) - 首を縦に触るのではなく、『振る』ではないですか? (2019年9月8日 11時) (レス) id: acbd1e9f39 (このIDを非表示/違反報告)
? ????? ?(プロフ) - 第1章おつかれさまでした!すごくすごく続き楽しみにしてるので更新早くして欲しいです(>_<) がんばってください!!♪ (2019年8月9日 1時) (レス) id: e7d5c65650 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにー(プロフ) - 茅架さん» 作者様本人ではなくすいません。その文書は合っていますよ!"違わず"というのは"たがわず"と読み、間違わずと言う意味です。 (2019年8月1日 1時) (レス) id: 2d86003c92 (このIDを非表示/違反報告)
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