第12話 密会先 ページ13
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先ほど電話した一瞬、確かにAの携帯からは何処かの学校の下校を促す放送が聞こえた。
現在午後六時前。
この時間に放送をするのは大抵中学か高校。Aの移動時間を考えて、電車に乗った場合も込みで、およそ一キロ圏内の中等学校。
反響の具合から、学校からは少しばかり離れている。方角は恐らくポアロの入り口から左曲がり。
予測をつけつつ、オレは日没までまだ余裕があるのを見て、スケボーを一気に加速させた。
米花中学校に辿り着いたオレは、そのまま周辺を手当たり次第にスケボーで走り抜けた。するとある角の前で、Aらしき女子高生の後ろ姿が見えて急ブレーキをかける。
スケボーを抱えてその影に近づくと、側で他人の声がした。
「ありがとうございました」
「あぁ」
運悪くも別れ間近で会話の中身は聞こえず、男と別れたAがオレのいる角に向かってきた。
まずい、と思ってあたりを見渡すも、隠れられそうな場所が見当たらない。
結局その場から離れられず、Aが角を曲がって真っ先に彼女はオレの姿を見つけ、目を丸くした。
「……あれ、こ…コナン君?」
何でこんなところにと言わんばかりの眼差しに、オレは苦笑いを浮かべた。
「あ…アハ……さ、散歩してたら迷っちゃって…A姉ちゃんが見えたから…」
「散歩ってスケボーで? ここ蘭のお家からは結構遠いのに……」
迷子になったというオレの言葉をあっさり信用して、Aは少し悩んだ後、「じゃあ私と一緒に帰ろっか!」と微笑んだ。
「いいの? やったー!」
「でももう知らない道をスケボーで走ったりしちゃダメだよ? 事故に遭うかもしれないし…」
約束すると頷くと、Aは納得した顔を見せてオレに手を差し伸ばしてきた。
工藤新一の時は触れることもろくに出来なかったAの手を、小学生という特権で今はいつでも握れる。江戸川コナンという立場を歯痒く思う事は多いが、この点だけは悪くないと思う。
鼻歌でも歌いそうなご機嫌なAを眺める。さっきの男は一体誰だったんだろう。私服で、顔はよく見えなかったが、かなり身長も高かった。知り合いにあんな奴がいただろうか。
オレはどうしても気になる気持ちが抑えられず、Aに声をかけた。
「ねえA姉ちゃん、さっき誰といたの?」
「ん?」とAがオレを見る。
彼女は少し笑って「学校の友達だよ」と答えた。
しかし、それが嘘だとオレは知っていた。
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FenGkaz710(プロフ) - 2章楽しみ (2020年6月16日 19時) (レス) id: 760679ded1 (このIDを非表示/違反報告)
琴葵(プロフ) - 面白すぎたのでシリーズ化していると思いました……。面白過ぎます!!!更新応援しています!!!シリーズ化大希望です!!!!! (2019年12月6日 3時) (レス) id: b0ea0349a7 (このIDを非表示/違反報告)
Akiko Tanei(プロフ) - 首を縦に触るのではなく、『振る』ではないですか? (2019年9月8日 11時) (レス) id: acbd1e9f39 (このIDを非表示/違反報告)
? ????? ?(プロフ) - 第1章おつかれさまでした!すごくすごく続き楽しみにしてるので更新早くして欲しいです(>_<) がんばってください!!♪ (2019年8月9日 1時) (レス) id: e7d5c65650 (このIDを非表示/違反報告)
ぽにー(プロフ) - 茅架さん» 作者様本人ではなくすいません。その文書は合っていますよ!"違わず"というのは"たがわず"と読み、間違わずと言う意味です。 (2019年8月1日 1時) (レス) id: 2d86003c92 (このIDを非表示/違反報告)
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