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幕間────ベジータ2 ページ9

「あらベジータ、誰がいないの?」

ブルマだ。

「何その指輪?貴方がそんなのするの、珍しいじゃない」

「あぁ。・・・・・・」

何を感じとったのか、それ以上何も言わず、そっと俺の隣に座る。

「あら、今夜は満月なのね。綺麗だわ」

そう空を見上げるブルマを一瞥し、俺は指輪をそっと外した。
そして俺も、空を見上げる。
お互い何も話す訳もなく、ただ空を見上げ月を眺める。
緩やかな時間がただ流れた。




「俺は昔、」

「えっ?」

俺を見てきたが、俺は顔を動かすことなく、月を見ながら話し始める。

「俺は昔、惑星ベジータにいた頃、妻がいた、という話はしたことがあるな。俺は彼女を、心の底から、愛していた」

「初恋だった。ある神が偶然惑星ベジータに連れてきた女だったのだが、俺は心底惚れ込んだ。その上、その女は俺に逢いに来たと言ったんだ」

「その女・・・、Aは不思議な女だった。何せ戦闘力なんぞ皆無も感じられないのに、俺より強いんだ。恐らく今戦っても勝てるかどうか分からん。それ以外にもふざけた力を色々持っていたしな」

「どれもこれも全部引っ括めて、俺は#名前#を愛していた。初めて会ってからそう時間は経たないうちに俺たちは結婚した。Aは正式に、俺の妻、戦闘民族サイヤ人の姫になった。それからというものは、俺は本当に幸せだった。・・・・・・幸せだったんだ」


ずっと黙って俺の話を聞いていたブルマが、また空を見上げた。

「そんなに素敵な人なのね、そのAって人。」

「そうだな・・・、俺には勿体ないほど、な」

「Aさんは今?」


「俺が最後に見たのは、惑星ベジータが消滅する少し前。長期任務で星を離れる俺を見送りに来た姿だ」


「・・・・・・そう」



Aはもういない。
自分の中で何度も何度も反芻し、やっと呑み込めた事実。
その事実が、今でも俺を苦しめる。



「後悔、してる?Aさんを星に残したこと。地球へ、来たこと」

俺は後悔しているのだろうか。
正解は一体何なのだろうか。
分からない。が、紛れもない事実は一つある。

「俺の妻はお前だ。それに、トランクスもいる」

「ベジータ」

普段はまず言わないが、感傷に浸りすぎたのか、美しい月の魔力なのか、口が良く動く。

「今の生活も・・・幸せ、だ」


妻もいる。息子にも恵まれた。
心の底から、今の俺は幸せだと言えよう。


しかし、願わくばもう一度お前に──────

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作者名:piace | 作成日時:2018年5月7日 22時

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