幕間────ベジータ1 ページ8
お前と出会ったあの日も、お前が正式にサイヤ人の姫となったあの日も、最後にお前を見たあの日も、空には月が浮かんでいた。
地球で世帯を持って何年が経っただろうか。
地球人と結婚し、子供も生まれた。
昔のように好き勝手戦闘や略奪をする事はもう叶わないが、これはこれで幸せ、なのだろう。
だが、俺の心からはまだAが離れない。
戦闘の邪魔になるからと滅多に着ける事の無かった結婚指輪。
後生大事に持っている俺は女々しいのだろうか。
「最後に着けたのはいつだったか」
戦闘で傷つこうが、息絶えようが、この指輪は何故か俺の元にあった。
無くなったと思っても、気がつけば傍にあるのだ。
Aのあの、不思議な力がそうさせているのだろうか。
考えても答えには辿り着かないから、きっとそうなのだと自分では思っている。
この指輪は、俺と彼女を繋ぐ、最後の砦だ、と。
「少しの間くらいいいだろう」
一瞬躊躇ったが、その指輪を元あった場所、左手の薬指に填める。
月光にかざすと、まるで昔に戻ったかのような感情になる。
懐かしく温かな気持ち、それと同時に、まだ自分の中ではAの存在がこれ程までに大きいのだと痛感させられる。
「もうお前は、いないんだな」
そうポツリと呟くと、背後に気配を感じた。
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作者名:piace | 作成日時:2018年5月7日 22時