BALL34 ページ35
がるる…と威嚇している犬のように御幸を見つめるA。
御幸一也という男は、顔だけはいい。
ずっと見つめられるとさすがに照れる。
仕方なく、｢…っわかったよ。もうやめてよ、ほんとに。絶対。｣と許してしまった。
心の底から安心した御幸は、｢おう、もうしねぇ。｣と心に誓う。
Aに無視されるということは中々辛い。
そう学んだ。
そんなこんなで広いモールの隅にある本屋はもう目の前であり、心が高鳴る。
気分良く入ろうとすると、｢…あれ、Aじゃん。｣と女子の声が四人の耳に入った。
息が詰まる。
｢……ｯﾊ…｣と嫌な汗が流れる。
やめて、その声で私の名前を呼ばないで。
振り向きたくない、振り向かなきゃならない。
いろんな気持ちが、ぐっちゃぐちゃに混ざり合う。
｢…っ久しぶり、真希。｣と久し振りに呼んだ彼女の名を読んだ声は、やけに震える。
｢笑わなきゃ、上手くやろう。いける、頑張れ自分。｣と自分に言い聞かせて、自然に笑う。
真｢えぇ〜超久し振りじゃん！てか何、御幸くんと倉持くんも一緒だ〜！｣
御｢どーもっす。｣
倉｢…っす。｣
真｢もう二年に上がってから来なくなって心配したんだよー？｣
｢ごめんって、私もちょっと事情があってね。相変わらず遊び歩いてる真希は勉強ついてけてんのー？｣
真｢なっ、馬鹿にしてるなー？イチオーできてますよーだ。｣
｢あははっ、怪し〜！｣
真｢あ、そいや友達待たせてるんだった…Aも来る？｣
｢えっ？いや、今日は遠慮しとく！私が急に来たらビビるっしょ笑｣
真｢そ？じゃまた今度！学校こいよー！｣
｢おー！｣
そう言って嵐のように去っていく彼女。
｢なんだったんだ…｣と呆然するしかない三人を横に、Aは気が抜けたのか｢…っは…｣と息を詰まらせていた。
つい貧血のような症状に襲われる。
倉持の方によろっ…と倒れかけた。
真｢…何アイツ、まだやめてなかったんだ学校。｣
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