BALL15 ページ16
全員が｢…は？｣と驚いて動けない中、唯一体に動かしたのは沢村。
ドアノブに手をかけたAの手首を掴んで、｢まっ、待って！！｣とつい呼び止めてしまった。
ふんわりと香水のいい香りを匂わせながら、ふわっと髪を揺らして振り向く。
その姿は、亮介が珍しく驚いた顔をする程 綺麗。
｢…？沢村？｣と呼ぶA。
今まで見てきた大声を上げてキャーキャー言うバカっぽいAの面影はない。
どこか儚げで、かつ触れたら割れてしまいそうな。
紛れもない女子だ。
…いや、生まれてこの方ずっと女子なのだが。
大人っぽい化粧も、
すらっとした生足も、
髪がポロポロこぼれているうなじも。
まるで、全く知らない別人が居るような気分。
勢いで呼び止めた沢村は、｢あっ、いや…｣とたじろう。
それを援護するかのように亮介が付け足した。
亮｢何その格好。男とでも出かけるの？｣
｢まぁ、あながち間違ってはないですね。語弊があるけど。｣
沢｢A先輩…彼氏いたんスか？！｣
伊｢…つーか、なんで女子みたいな格好してんだ…？｣
｢彼氏じゃないし、そもそも私女子だし？
何、私にときめいたか。｣
沢｢いやっ…別にそういうわけじゃ…！｣
郁｢A。｣
｢…郁也？！あれ、なんでいんの？！｣
郁｢さぷらーいず。｣
部員達とゴタゴタ話していると、いつの間にか食堂に入ってきた郁也が立っていた。
サプライズとして、ここまで迎えに来てくれたらしい。
185cmという丹波と同じくらいの身長を持つすらっとしたイケメン。
沢村の手を離してもらい、｢なんで来たの。｣と怒る。
あまり兄を見せるのは好きじゃない。
郁｢んだよー寂しいこと言うなよ。久しぶりに会ったんだから。｣
｢うるさいなぁ…ほら、外出て。すぐ行くから。｣
御｢なぁA、その人どちらさん？｣
珍しく名前で呼んでくる強気な御幸。
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