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3:君の求めるもの ページ5

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「…けど、父の死の原因が事故だろうと殺人だろうと意味は無い。母は私だけが生き残った事に心底怒り、私を憎んだ。

"何故お前では無く、彼が死んだの!生きる意味など無い子供のお前が!!"

…ってね。

それで私は捨てられたのさ」



彼は、そう云うと何もかも諦めた様な貼り付けの笑顔を浮かべた。



『…酷い母親ね』


「嗚呼。昔から気性は荒かったし、自分の子供を捨てる様な酷い母親さ。

でも母の言葉は正しい。私は子供で、ただ息をして、食事をして、寝るだけの利益なんて無い不良品の様なものなのだよ。


私には、生きる意味が無い」



その言葉で、私はある決心をした。





『なら、私の処においで』


「……え?」



少年は目を見開き、私を見つめる。

何だかそれが可愛くて、私は小さく笑い乍ら言葉を続ける。



『私の父の仕事場、良い処なの。

ポートマフィアに来れば、生きる意味が見つかるかもしれないよ』



私がそう云えば、彼は更に目を見開き口を開いた。



「ポートマフィア……聞いた事がある。ヨコハマで悪事を働く非合法組織。

……もしかして、君の父親って…」


『そう。ヨコハマ一帯の闇を取り締まる、ポートマフィアの長。

その人が私の父。…まぁ、本当は(じき)に首領になるっていう私の憶測なんだけどね。

けど本当の首領は病で弱っていて、今は父様が半分近く指揮を取っているわ』


「…真逆そんな凄い人に声を掛けられるとはね……驚きだよ」



本当に驚いた、という様な顔で彼はそう呟いた。



『あ、云っておくけど偉い人みたいに扱わないでね。

それで、如何かしら?私は本気なのだけど』



そう聞けば、少し考える素振りをしてから彼は立ち上がった。



「…その勧誘、有難く受けるよ。

ポートマフィアの様な場所なら、私の求める"生きる意味"が見つかるかもしれない」


『ふふ、君ならポートマフィアで一番の人になれると思うわ』


「そうかい?」


「ええ。じゃあ父様の処へ行きましょう!でもその前に服や髪もちゃんとしないと!」


「えっ、ちょ、待ち給えよ!」



慌てる彼の手を引き、私は路地を出た。



彼が勧誘を受けると云った時、何故かとても嬉しかった。


何だか今迄感じた事の無い、心が弾む様な、心の奥が暖かくなる様な、不思議な感覚がしていた。

4:太宰治と森鴎外の初対面→←2:過去の記憶



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団子 - 面白いです!続きが気になります!頑張って下さい! (2017年11月10日 18時) (レス) id: 565b1876f3 (このIDを非表示/違反報告)
味の素(プロフ) - 更新がんばってくださ〜い (2017年9月6日 17時) (レス) id: d5befd4dfc (このIDを非表示/違反報告)
- めっちゃ面白い!続き期待ー!更新がんばれ! (2017年8月19日 2時) (レス) id: 0a6b6d9361 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 鑓さん» この話は『もしも』と私の『想像』の話ですので、原作とは別として考えて頂きたいです。もし原作で太宰さんを勧誘した人が出てきた場合も、別の話として読んで頂ければ幸いです。もし気分を害されたのならば申し訳有りません… (2017年2月14日 6時) (レス) id: c90b0030f9 (このIDを非表示/違反報告)
- あの、原作に太宰さんをマフィアに勧誘した人が出てきたらどうするんですか?まだ出てきませんが原作ではAの他にもう一人幹部がいる、という設定になってるので勧誘した人が出てくる可能性はそれなりに高いと思うんですけど。 (2017年2月14日 1時) (レス) id: afa2739a1f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2016年10月28日 10時

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