28:悪夢 ページ33
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私は病室を出た後、子供達の居る洋食屋へと向かった。
『…空はこんな時でも綺麗なのね』
この街で大きな抗争が起きようとしているのに、空は暖かな光を放っていた。
歩いていると、両手一杯のお菓子や玩具の入った紙袋を抱えて歩いている織田作を見付けた。
『織田作、大変そうね。
半分くらい持ちましょうか?』
「…A、傷はもう良いのか?」
私は驚いた後に心配そうに訊ねた織田作に『大丈夫よ』と微笑み、紙袋の中の半分くらいのお菓子と玩具を手に取った。
「袋、無くて大丈夫か?」
『これ位平気よ、と云うよりも随分と沢山買ったのね 』
「あの子供達にとっては不十分かも知れないがな。
大人の充分は何時も子供にとっての不十分だ」
確かに、と笑って頷けば子供達の居るであろう洋食屋に到着した。
ガチャ、と扉を開く。
そして、手の中の荷物が地面に落ちた。
店の中が、荒らされていた。
強盗か何かに、襲われた様に。
「何だ……!?
…ッ、親爺!!」
店主の親爺さんは、胸を銃弾で撃ち抜かれて死んでいた。
嗚呼、嗚呼、只の悪夢であって欲しい。
この数秒で、最悪な事態が私の脳裏を横切った。
織田作は、二階の子供達の部屋へ。
私は、駐車場に有った苔色の小型バスの方へと駆け出した。
洋食屋の扉を開ける一瞬前、あのバスの方から微かに声が聞こえた気がしたのだ。
バスの目の前まで着いた瞬間、私は躊躇い無くその扉を勢い良く開いた。
其処には、襤褸を纏ったミミック兵二人と子供達。
「Aッ…!!」
『幸助……!?』
私を見て驚いた子供達の最年長、幸助の顔を見て、私も驚く。
目元が、殴られた様に腫れている。
青紫に、痣になっている。
それだけで、既に静かに燃え始めていた胸の奥底の怒りが、一気に燃え上がった。
だか一瞬でその怒りは頭の奥底へと消え、その代わりに恐怖が頭を支配した。
警報が鳴り響いていた。
ミミック兵が手に持っている装置が、何なのか。
見ただけでそれは分かった。
『止めろ!!!!』
私は、その装置を押させまいとミミック兵に手を伸ばす。
伸ばした手は虚しく空に弧を描き、カチ、と装置が押された。
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最後に見えたのは、私を中心に広がる血溜まり、炎上するバス、そして泣き叫ぶ織田作の姿だった。
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団子 - 面白いです!続きが気になります!頑張って下さい! (2017年11月10日 18時) (レス) id: 565b1876f3 (このIDを非表示/違反報告)
味の素(プロフ) - 更新がんばってくださ〜い (2017年9月6日 17時) (レス) id: d5befd4dfc (このIDを非表示/違反報告)
R - めっちゃ面白い!続き期待ー!更新がんばれ! (2017年8月19日 2時) (レス) id: 0a6b6d9361 (このIDを非表示/違反報告)
藤(プロフ) - 鑓さん» この話は『もしも』と私の『想像』の話ですので、原作とは別として考えて頂きたいです。もし原作で太宰さんを勧誘した人が出てきた場合も、別の話として読んで頂ければ幸いです。もし気分を害されたのならば申し訳有りません… (2017年2月14日 6時) (レス) id: c90b0030f9 (このIDを非表示/違反報告)
鑓 - あの、原作に太宰さんをマフィアに勧誘した人が出てきたらどうするんですか?まだ出てきませんが原作ではAの他にもう一人幹部がいる、という設定になってるので勧誘した人が出てくる可能性はそれなりに高いと思うんですけど。 (2017年2月14日 1時) (レス) id: afa2739a1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤 | 作成日時:2016年10月28日 10時