炎のような師範 ~その壱~ (ページ11)

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槇寿郎さんページ11

私は煉獄家に入ってから自分から家事をし始めた。何故なら家族がいた頃母親は少し体を壊しやすかったため家事をよく手伝っていたからだ。うちは6人家族だったから3人など全く問題ない。体が勝手に動く。

槇寿郎さんも気が利くなと笑ってくれた。
千寿郎君には頑張りすぎと言われて手伝ってくれる。優しいなぁ。
入って一週間まもないが幸せだった。

ある日、槇寿郎さんの方へ食事を置きに行くと槇寿郎さんは縁側で月を見ながら酒を飲んでいた。すると振り向かずに喋り始めた。

「Aは…どんな最期だったのか。」

急に言うから少し心がきゅっとなってしまった。

『鬼舞辻に眠っているところを殺られました。そのとき私は体を壊していた母の為に街に行っていました。多分父は家族を守ろうとしたのですが突然の鬼舞辻に対応できず、なおかつ鬼舞辻は父に恨みを持っていたので父も殺られてしまいました。』

フラッシュバックする。涙が止まらなかった。
槇寿郎さんは月を見たまま言った。

「思い出させてすまなかった。…少し話に付き合ってくれ。……あいつがな、柱になった時は紅は炎の呼吸の派生だと言われてたから少し見下していたんだ。でもあいつはいつも優しい目をしていた。君と同じ緑色の目だ。あいつの技は私たち炎の呼吸に全く劣らないほど技が綺麗だった。驚いたよ。諦めの悪い男で絶対に諦めなかったな。諦めるんじゃないと私によく叫んでいたな。君を見るとよく思い出す。そんな奴が今はいないんだ。……だからな、君が生きているのには必ず意味があるんだ。」

そうすると私の方を向いてふっと笑った。

「だから絶対に自分も死にたいとか思うんじゃない。意味があるからには父の思いも受け継いで人のためにこれからも希望を持って生きて欲しい。」

『……っ……はい!!』

涙をふいて笑った。この話は煉獄さんには秘密。
夕飯を食べ家事を終わらせて一休みしていると煉獄さんがやってきた。

「お疲れ様だな!!次から俺も手伝うぞ!!」
『煉獄さん、お気遣いありがとうございます。でも大丈夫です!』

すると煉獄さんはむぅという顔をした。

「悪いがこの家には煉獄が３人もいるから呼び名を改めて欲しい!!」

これはこれは。どうしよう。確かカナヲは継子だから師範と呼んでいたな…。

『すみません!では、師範と呼ばせていただきます！よろしくお願いします、師範!!』

「…まあそれでも良い!!」

この一家は優しい人ばかりだ。