【◇A】青心寮在住の引きこもり、その二。【逆ハー】

BALL88 ページ44

今度はAが御幸の口を塞ぐ。

ここから沢村の返事が始まるというのに、バレてしまっては元も子もない。

黙ってろと目で御幸を殺し、沢村たちの方に耳を澄ませる。

｢沢村…なんて返すんだろ…｣とちょっと不安げに見つめる。


もしこれで沢村が付き合ってしまったら。

安易に抱きつくことも出来なくなるし、
今までのようなスキンシップも控えた方がいいだろう。


すると、沢村は悩んだ素振りを見せてとうとう返事をした。



A｢…沢村くん……？｣

沢｢あの、えぇっと…その気持ちはすっげぇ嬉しい。｣

A｢っじゃあ…！｣

沢｢……でも、俺今は野球が楽しいんだ。野球するために、ここに来たから。｣

A｢…｣

沢｢それにちょっと可愛いなって思ってる人も居るんだ。いつもウザ絡みしてくるし、正直めんどくせぇっちゃめんどくせぇんだけど…。｣

A｢そっ…なんだ……。っわかった…ちゃんと返事くれてありがとっ……じゃぁね！｣

沢｢あっ、ちょ……、あぁ行っちまった……。｣



沢村は、見事に女の子を振っていた。

性格だけは一丁前に男らしいから、やっぱり振り方も男らしい。

きちんと至極真っ当な理由を説明して、
きちんと傷つけないように話して。

あそこまでキッパリ言われると、きっと言った方も清々しいだろう。


まぁ、Aに関しては今そんな事関係ない。

沢村が口にした、｢ちょっと可愛いなって思ってる人｣は恐らく90%の確率でAの事。

まさか本音があんなふうに思ってくれてただなんて、思ってもいなかった。

ぶわぁぁっ…と顔を赤くして、御幸から思わず目をそらす。









｢なんだっ…なんだよあいつ……私の事ちょー好きじゃん……。｣


御｢はっはっは、顔真っ赤だぞお前。｣


｢眼鏡カチ割ったろかくそ眼鏡。｣




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