ブリード本丸 "三"

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死んでしまうと思った









でも、やはり人の体は思ったより丈夫で






腕を折られても、治るし




身体を甚振られても、慣れるし




人を殺しても、無感情になれる









精神を病んでも




まだ、私は生きている









「……はぁ」




光をつける気にもなれず




一昨日の夜から電気をつけないで




端にうずくまっていた









(どうやったら、しねるの…………)





もう、何もしたくない




もう、何も見たくない




もう、何も感じたくない








太陽の光も呼吸器官が動く振動も




心臓が動く音も







何もかも









感じたくない




見たくない




聞きたくない






誰にも、関わってほしくない









「……………」








人間って、何だろう








人は正義で、人は悪




でも、それって誰が決めたの



人間自身が決めたんだ








誰かにとっては悪でも、決めた人が善なら





その悪は"正しいこと"






誰かにとっての善は、決めた人の悪なら





その善は、"悪いこと"









視界に大倶利伽羅が映る







神力を送っていないから、




何となく透けているような気がする









「……悪法もまた、法なり





ソクラテスの、言葉だったかな………」







天を仰げば




また、涙が流れる



頰を伝って止めどなく








人間を変えることは、Aには出来ない




悪い人間を受け入れることもAには出来ない







Aには力がない



なにかを成し遂げる力がない







Aは少年漫画の主人公ではない




Aは英雄ではない




Aは、ただ、一人の神子でしかない









なにが原因なのか





心なのか、気力なのか、才能だったのか、



幼少教育のせいか、環境のせいか、



出会ってきた言葉のせいなのか








ただ、言えることは彼女が何かしたからと言って




何万年と存在し続ける人間の性質は




早々変わらないということだ









ガチャ




Aは枯れた涙の跡を拭く




そして、大倶利伽羅を手で握りしめて




神力を流す





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