ブリード本丸 "三"

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［会うは別れの始め］





柑子の墓の前に立つ




病気だった




柑子は生きたがっていた




でも、それ以上に外を怖がっていた







なれるはずもないのに、




救世主になりたくなる






桃の一だって奇跡を起こして下さる神様が降臨したらきっと、




自分の命を投げ出すだろう







柑子の墓の前に



彼の大好きな蜜柑を置く






そして、Aは本丸に戻る






「ちょっと、A！！」




戻って早々に肩で息をしている燭台切に会う







「大きい声出さないでよ。五月蝿い」





「出掛ける時は声かけねぇと





燭台切の旦那、朝から走り回ってたぜ」





薬研がフラリと燭台切の後ろから現れて




そう、諭す









「……はぁ、薬研に似て静かな子が生まれてくればいいのに」







まだ膨らみの小さいお腹を撫でる









「冗談でもそんな言葉は聞きたくないな」






燭台切が嬉しそうに私に笑う









「……じゃあ、せめて竹を割ったような性格の子がいい」




「そうだね」









現世から離れて十年以上が経った









遊子の子達は上手くやっているだろうか







それに、そろそろ命が帰ってくる







いや、あっちで生きることを選ぶかもしれない









ここの本丸は昔に比べると随分丸くなった




赤子が二、三人しか居ないし




刀剣達も子どもの扱いに慣れたようだ








今では殆ど入ってくる神子もいない









結婚して子供が生まれる数より




出て行くこの方が多い






少しずつここは人が減っていく









冬を知らせる冷たい時雨が降る






雨を眺めていると心が落ち着く









「ちょっと、また零したの！？」









「オレじゃねーし！あいつだ！」






「違うだろ！お前が押してきたからだろ！！」









本丸の何処かからか子どもの声がする




刀剣の声も少年少女の声も









きっと、ここの本丸は日本一騒がしいだろう









「……お前も、ここを出て行く日が来るのかな」






夫婦が誕生する




子どもが生まれる




でも、ここはいつか人が居なくなる









「…………」




Aは雨を眺めていた







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