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ジェヒョンはただ黙って頷いて、繋いだ手を親指でなぞって。
JH「A、おめでとう。すっごく、すっごく嬉しいよ」
まるで子どもをあやすように優しい笑顔をくれるから、ちゃんと本当に喜んでくれてるって伝わってきて、結局私は涙に飲み込まれる。
ずっと言えずにモヤモヤしていたのに、言ってしまえば、なんでもなかった。
私が不安になる隙もないほどに、心の底からの気持ちだと分かる優しい目をしているジェヒョンが、そんな小さな嫉妬を私に向けるはずもなかったのに。私はそれを、信じられなかったんだ。
なんて情けないことだろう。
『……ずっと言えなくて、ごめんなさい。仕事のせいで、もしもジェヒョンの気持ちが離れたらどうしようって…… そんなはず無いのに、少しでも疑って、ごめん』
ポロポロとこぼれる涙を必死に手で拭えば、彼はその仕草ごと抱き締めてくれる。
JH「それを言うなら、俺もだよ。俺も本当は、ドラマが決まる度に、Aに伝えるのは勇気がいるから」
トントンと背中を叩いてくれる手のひらは、慰めにしては力が強すぎる気もするけど、それが彼らしくてまた落ち着く。
『それは私が一回、大暴れしちゃったから……』
JH「ああ、まあ、それもあるんだけどさ。そうじゃなくて」
ふふ、とくすぐったく笑う彼はもう一度私を離して、見つめて。
さっきよりもちょっとだけ悲しそうに目を細めた。
JH「Aは、すごく才能のある女優なのに」
その言葉に、それもバレていたか、本当にジェヒョンは私のことなんでもお見通しだな、なんて呑気なことを考えて。
だけどやっぱり、そんなことないよ、なんて、気のきいた嘘はつけなかった。
私とジェヒョンは、高校の二年生からの同級生でもある。
所属していたのは芸術高校の、実用演劇科。演技を専攻として学ぶ学科だった。
演技をするのは、好きだった。
一度しかない人生で、他の誰かの命を借りるような感覚。私という、ちょっと気張りすぎな生き方を一旦下ろして、また違う日々を描く。
実技のクラスではそれなりの評価も貰ったし、短めのスクリプトを用いての課題をジェヒョンと組んで演じたこともある。
でも、卒業以来、演技の仕事が私に来ることは無かった。
まあ、単純な話で、日本人の私が韓国で役を貰うのは物凄く難しいのだ。
だからもうとっくに諦めているのだけど。
ジェヒョンのドラマ出演が決まる度に、羨ましいな、とは思う。
そして彼も、そんな私に気付いていて。
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ゆゆ(プロフ) - 塩水さん» コメントありがとうございます！熱心に読んで頂いているのが伝わってきて、私の方が素晴らしい読者さまに届いて嬉しく思います。これからもご期待に応えられるよう頑張って更新するので、引き続きご愛読頂けると嬉しいです！ (2021年3月5日 17時) (
レス) id: e6590da59e (このIDを非表示/違反報告)
塩水(プロフ) - お話を読み返すほど作品に対する熱情が伝わってきて、こんな素晴らしい作者さんが書く、素晴らしい作品に出会えてよかった、と思いました。初めてのコメントで拙い文章になってしまいましたが、最後まで読んでいただけると幸いです!長文失礼致しました! (2021年3月5日 17時) (レス) id: ca8e68c7c0 (このIDを非表示/違反報告)
塩水(プロフ) - こんばんは。いつも紅一点シリーズ楽しませて頂いております!その場や人の細やかな心情を表現する文章は勿論、紅一点という題材を元にK-POP界の様々な問題を取り上げてストーリーに練りこんだこの作品が大好きです! (2021年3月5日 17時) (レス) id: ca8e68c7c0 (このIDを非表示/違反報告)
なおてぃん(プロフ) - ゆゆさん» 禁句は笑いました（笑）これからもこのお話の中のジェヒョン達がどのように幸せを掴んでいくのか見守らせてください(^^)応援しています！！ (2021年2月24日 16時) (レス) id: 600e5004d6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - なおてぃんさん» 温かいコメントありがとうございます。さらに好きになっただなんて、一番の褒め言葉です……！正直私もジェってこんなに優しくない気もしますが(禁句)笑、このお話の中では彼女に出会って過ごす日々が彼をこうしたのだと思います。これからも応援よろしくお願いします！ (2021年2月22日 13時) (レス) id: e6590da59e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆゆ
| 作成日時：2020年12月30日 1時
