長い長い園芸家の旅路 ページ28
喫茶うずまきに、来客を告げる鈴の音が響いた。
「いらっしゃいませ！」
店員のモンゴメリに案内されて席に着いた客は、やれやれと荷物を降ろした。
「ふぅ、ヨコハマは人が多いね。ヨゼフ兄さんは何にする？」
「僕はカフェラテにしようかな。カレルは？」
「うーん、ボクはココアで」
店員が注文を確認したところで、兄弟は荷物の中から端末を取り出した。
「兄さん、日本に来てから暫く経つけど……やっぱりボク、今度は日本に住みたいなって」
「奇遇だね。僕もだよ」
「庭つきの日本家屋で、松や牡丹を育てながら暮らすんだ」
「そんな樹木、一から育てるのは無理だよ……いつ引っ越さなきゃいけないかも判らないのに……」
話している二人の前に、温かな飲み物が置かれた。
「ご注文の品は以上でよろしいでしょうか？」
「ああ、うん……あれ、君ここの国の人じゃないよね？」
ヨゼフに指摘され、モンゴメリは素直に頷いた。
「そっか、じゃあボクらと一緒だね！」
「僕たち、チェコから色んな所を点々と旅しながら此処まで来たんだよ」
「チェコ……ヨーロッパの国から？」
「そうそう！」
「あたしはアメリカ出身だけど……まあ、色々あって此処で働いてるの」
少し極まり悪げに云ったモンゴメリに、カレルは明るく云った。
「色々かあ！ボクとヨゼフ兄さんも、色々あって旅してる！」
にっこり笑ったカレル。
「世間話はそれくらいにしといて、早く飲まないとココアが冷めちゃうよ」
「ほんとだ！」
カレルはココアを一息に飲み干し、ヨゼフに話しかけだす。
「……ねぇ、此処の近所で良い物件ないかな？庭なくてもいいからさ」
「……駄目だよ。此処は人の流れが活発すぎる。こんな処にチャペック兄弟が居るって知れたら大変な事に為るよ」
「でもさ、此処にはボクの作った物語が好きそうな子がいるから、彼女と友達になりたいんだ」
「駄目だよ……僕らの異能を危険視する人らに、あの給仕の子まで狙わせる気？」
「兄さん、ダーシェンカが殺されてから、そういうとこ厳しいよね」
「当り前だよ。人でも犬でも庭木でも、大切なものが失われたら悲しいよ」
「……そうだね」
二人はモンゴメリの方に目を向けたが、直ぐに眼を降ろしていた。
「物質を変質させ、あらゆるものに変化させる」異能を持った兄弟の、安住の地を探す度はまだ続きそうだ。
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Unknown X - ありがとうございます♪楽しみにしてますね♪ (2018年11月18日 20時) (
レス) id: 10e952ee54 (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - Unknown Xさん» こちらはもうお話が一杯なので続編のほうに書くことになりますが、よろしいでしょうか？ (2018年11月14日 17時) (レス) id: acfd73fd70 (このIDを非表示/違反報告)
Unknown X - リクエストいいですか？谷川俊太郎さんをお願いしたいのですが… (2018年11月14日 16時) (レス) id: 10e952ee54 (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - イツキ108さん» わかりました！構成の都合上、続編にて書かせて頂くことになりますが、ご了承ください。 (2018年9月18日 18時) (レス) id: 1feef1598f (このIDを非表示/違反報告)
イツキ108(プロフ) - キューブさん» 返信遅れてすみません。ありがとうございます！リクエストで、萩原朔太郎先生で,芥川さんと登場させて頂けないでしょうか...?異能は出来れば敦君に似た獣化系でよろしくお願いいたします。わがままですみません....! (2018年9月17日 23時) (レス) id: 4a38a1604c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キューブ | 作者ホームページ：
作成日時：2018年7月4日 22時
