死にたがりと飛行士と ページ3
星の煌めく夜のこと。
「こんばんは、探偵社の太宰くん」
「……こんな処に呼び出すとは、一体何の心算だい?サン=テグジュペリさん?」
二人が立っていたのは、4年前、織田作之助が殺された場所だった。
サン=テグジュペリは青い瞳でじっと太宰の瞳孔を見つめている。
「……太宰くん、教えて欲しいことがあるんです」
「何だい?」
「人づてに聞きました。4年前、此処でボクの師匠が殺されたと」
「『師匠』だけじゃあ判らないよ」
「……では、単刀直入に聞きます」
彼は大きく深呼吸をしてから、先程と同じように太宰の眼を見ていった。
「4年前、キミの親友である織田作之助が、ジイドさんを殺したというのは本当ですか?」
太宰は一瞬硬直した。
「……そうだ。織田作と奴とは、相打ちに為って死んだ。此れは覆らない事実だよ」
「……そうですか。……そうだったんだ。ジイドさんは死んだんだ。ジイドさんはもう居ないんだ。どんなに、どんなに宇宙を巡ったって、もう、ジイドさんには会えないんだ」
そう何度も何度も繰り返しながら、テグジュペリはぽろぽろと涙を零す。
「ジイドさんは、何があっても生きていると信じていたのに。英雄は死なないと勘違いしていたみたいだ」
「そうだよ……どんなに優れた人物でも、いずれは死ぬんだ」
「……太宰くん、最後に一つ、聞いても良いですか?」
「……?」
「ジイドさんは、最期に何と云っていましたか?」
「……彼は何も云わず、只満足げな顔で死んでいたよ」
「そうですか。わざわざありがとうございました」
そう云うとテグジュペリは、腰のホルスターから拳銃を取り出し、銃口を自らのこめかみに当てた。
「…止めるんだ、とか云ったほうが良い?」
「いいえ、止めないでください。ボクは飛行士として生きてきました。ジイドさんに才能を見出されてから、ずっとずっと、ジイドさんの事を追いかけて、ジイドさんを理想として生きていました」
ごくりと唾をのむ音がした。
「14年前、ジイドさんが戦争犯罪人にされて行方をくらましてからというもの、ずっとジイドさんを探していました。でももう、ジイドさんはいません。ボクの生きる理由はなくなってしまいました。生きていいよと云ってくれる人も、いなくなってしまいました」
引き金を引く音が響く。
「さようなら、師匠の敵の親友さん」
「……さようなら、織田作の敵の弟子」
太宰は銃声を聞きながら、その場を去った。
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Unknown X - ありがとうございます♪楽しみにしてますね♪ (2018年11月18日 20時) (レス) id: 10e952ee54 (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - Unknown Xさん» こちらはもうお話が一杯なので続編のほうに書くことになりますが、よろしいでしょうか? (2018年11月14日 17時) (レス) id: acfd73fd70 (このIDを非表示/違反報告)
Unknown X - リクエストいいですか?谷川俊太郎さんをお願いしたいのですが… (2018年11月14日 16時) (レス) id: 10e952ee54 (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - イツキ108さん» わかりました!構成の都合上、続編にて書かせて頂くことになりますが、ご了承ください。 (2018年9月18日 18時) (レス) id: 1feef1598f (このIDを非表示/違反報告)
イツキ108(プロフ) - キューブさん» 返信遅れてすみません。ありがとうございます!リクエストで、萩原朔太郎先生で,芥川さんと登場させて頂けないでしょうか...?異能は出来れば敦君に似た獣化系でよろしくお願いいたします。わがままですみません....! (2018年9月17日 23時) (レス) id: 4a38a1604c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キューブ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年7月4日 22時