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鈴と小鳥と山羊と町医師と ページ14

ふぁ、と小さな欠伸の音。


「おいおい、マフィアの幹部と首領の前で欠伸か?随分肝が据わッてやがる」


「ごめんなさいね、最近何だかとても眠くて……ふわぁ」


中原の見つめる前で、またしても彼女は欠伸をする。


「まぁまぁ、みすゞ君が睡魔に弱いのは昔からだからね」


「そういえば、そうだった気もするし、そうでない気もする」


「……ああもう!はっきりさせろよ!」


中原がいら立ちを隠しきれない横で、金子はくすくす笑っている。


「あなたは白黒つけたがりで、とっても目立つ人。わたしはぼんやりしていて、そのまま忘れ去られる人。つまりは、そういうことでしょ?」


「誰も君の事を忘れやしないよ。少なくとも、私と中也君の二人はね」


「あらあら、忘れてくれていいのに」


「忘れられる訳無ェだろ。手前は、俺と同じ研究所に居た被検体の一人だからな!」


金子は相変わらず、眠たげな瞳で中原を見つめた。


「そういえば、そんな事もあったかしら?」


「中也君が教えてくれたよ。貴女が、彼の過去を知る鍵の一部だと」


「あら、そんな大仰なものになった覚えは無いのに」


「覚えてないのは俺も同じだ」


「……なら、何故なのかしら」


急に声色の変わった彼女に、二人は表情を少し変えた。


「あなたはそんな輝かしい場所に居るのに、わたしはやもめ暮らし。みんな違ってみんないい筈なのに、わたしに良いことがあったように思えないの」


「……上辺だけ見れば、そうかもしれないね」


「下まで見たって同じよ」


「……判った、もういい。無理にこんな処に連れて来て悪かったな」


「あら、もう質問は終わり?」


「ああ」


「じゃあ、おやすみなさい」


「……此処で寝るのは……ま、一寸位なら良いか」


「そうだね、暫く寝かせておいてあげよう……」

幕間小咄「私と小鳥と鈴と」→←幕間小咄「華氏451度」



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Unknown X - ありがとうございます♪楽しみにしてますね♪ (2018年11月18日 20時) (レス) id: 10e952ee54 (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - Unknown Xさん» こちらはもうお話が一杯なので続編のほうに書くことになりますが、よろしいでしょうか? (2018年11月14日 17時) (レス) id: acfd73fd70 (このIDを非表示/違反報告)
Unknown X - リクエストいいですか?谷川俊太郎さんをお願いしたいのですが… (2018年11月14日 16時) (レス) id: 10e952ee54 (このIDを非表示/違反報告)
キューブ(プロフ) - イツキ108さん» わかりました!構成の都合上、続編にて書かせて頂くことになりますが、ご了承ください。 (2018年9月18日 18時) (レス) id: 1feef1598f (このIDを非表示/違反報告)
イツキ108(プロフ) - キューブさん» 返信遅れてすみません。ありがとうございます!リクエストで、萩原朔太郎先生で,芥川さんと登場させて頂けないでしょうか...?異能は出来れば敦君に似た獣化系でよろしくお願いいたします。わがままですみません....! (2018年9月17日 23時) (レス) id: 4a38a1604c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:キューブ | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年7月4日 22時

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