40-とても大切な人の為に*YH ページ40
ヒョンが人ごみをかき分けこちらに気づいた彼は、ありがとうとつぶやいて、
ヒョンの元に向かい、頭を下げてから俺に小さく手を挙げた。
彼と入れ替わりに俺の隣に来たヒョンは、意味ありげに俺を見る。
「何か気になることはありますか？」
いつもいつも聞き返してくれていた。自らは言えないことも聞けば教えてくれようとしていたことを初めて気が付かされた。
「・・・何もないよ。何も。」
そう。聞きたいことなど何もない。俺の中で決められたことが真実で、本当のことなど何一つ見えていなかった。
「俺は、俺たちはきっとヒョンに出会ってよかったんだと思う。」
「・・・・なんだそれ。」
苦笑いのヒョンは手にしたビールをあおる。
俺たちの後ろではにぎやかな音楽とともに幸せな人たちの様子が、スクリーンに映し出される。
花嫁たちは本当に幸せそう。
幸せに。どうか幸せに。
ヒョンが俺にどんな役目を望んでいるのかわからないけど、俺は知るだけでいい。
彼女が、彼女達がどんなに愛されている人か。
彼女達を守るために、仕事や生活を捨てる人がいるのだ。
切り捨てたのではない。そうすることでしか守れなかった。
仲間を。自分を。家族を。
結構極端だったけど。
もしそれが必然ならば、きっと出会うだろう。
俺がじたばたするよりも自然で穏やかに。
だから俺は祈るだけだ。彼女達の幸せを。弟たちの幸せを。
「いいのか？」
何も聞かなかった俺にヒョンは言った。
聞こえなかったフリをした。
「ヒョン、帰ろう」
俺の心の中にあった日本でのちょっとした蟠りはビールの泡と共に消えた。
重い扉を開けて、にぎやかな音楽の空間から抜け出す、
今日の続きの、新しい明日を待とう。
彼女と彼女達と俺達とあいつらの為の。
おしまい。
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革ベルト
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あずきいろ
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しんち(プロフ) - のこさん» ありがとうございます。なかなか更新できず・・頑張ります。 (2018年12月8日 22時) (
レス) id: b9b1b5a8d9 (このIDを非表示/違反報告)
のこ(プロフ) - お久しぶりの更新、嬉しいです！…読めば又切なさが蘇ってきて、ちと辛くもあるのですが… (2018年12月8日 21時) (レス) id: 72bf88ec29 (このIDを非表示/違反報告)
しんち(プロフ) - 嫁さん» こちらこそありがとうございます。蛇足な話なのにそんな風にいっていただけると。もう少しなのでご愛顧のほどを。 (2017年4月11日 0時) (レス) id: c77ad45416 (このIDを非表示/違反報告)
嫁(プロフ) - 更新ありがとうございます。切ない恋も人生ですね。簡単にはいかないから人生なのかもと思っています。 (2017年4月8日 16時) (レス) id: cc86b7eb97 (このIDを非表示/違反報告)
しんち(プロフ) - 嫁さん» ありがとうございます。いつか。わかってもらえるとうれしいなぁ。と私も思ってます。同じ気持ちでいていただいてすごくうれしいです。 (2016年6月25日 23時) (レス) id: c77ad45416 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しんち | 作成日時：2013年11月22日 1時
