幸せのかたち12 (ページ29)

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夜。

短めの晩酌が終わって、そろそろ寝ようかという所

やけど、酔いを少し醒ましてからと思って

夜風にあたるためにベランダに出た。

ほんなら隣と仕切られてる壁の隙間から

ゆらゆら動く人影が見えて、

隣の部屋誰やっけって思い返せば

しげだと気づく。

熱出てるくせに夜風に当たるとこにおる彼が
意味わからへんくて、

そのままベランダから話しかけた。

「おまえ、熱あるんちゃうの」

「……あ、じゅんたか、びっくりしたぁ、」

「なにしてんの、風邪ひくで」

「……もう引いとるから、」

「なおさらあかんやん、」

ぽわぽわ話す口調はしんどいときのしげで。

夜空を見上げてるであろうしげの
少しだけ見える横顔が

やけに儚くて

消えてしまいそうで。

思わず、

「なぁ、そっちいくわ、」

なんて言っていた。

ほんまは絶対やったらあかんけど、

なんとか隙間からしげのベランダへと移動

そんな俺を、なにしてるんって目で見てたしげは、

俺が隣に来たことを確認して

また夜空に目を移す

すると、彼はぼそっと呟いた。

「……やっぱりちゃうねんなぁ、」

「ん？」

「……北海道でもさぁ、星見ててやんかぁ、

めっちゃ綺麗やねん、、、数も凄くてさぁ

やけど、

やっぱり大阪の星がしっくりくるなぁって」

「……うん」

「……ふぅ、……なんか、淳太の顔みたら

力抜けるわぁ、」

突然、ふらっと傾いたシゲの体が

俺にもたれかかってくる。

その体温はライブ後よりも確実に高くて

「……うわ、あかんわ、しげ、中、入ろう

絶対しんどいやつやん」

辛いはずやのににこにこ笑っとるしげを

強引に抱えたまま、部屋に入った。