幸せのかたち9

・ ページ29

・







「…はぁっ、いやぁっ、こわいっ、」







中に入ると部屋の隅っこで丸まってる望






「望ー、照史来たでー？」







優しく声をかければそっと顔を上げた望と目が合う









「、ん、1人はあかんかったな？ごめんごめん、」







「…っ、あきとっ、こわいっね、んっ」







「怖いな？大丈夫大丈夫、もう俺おるから」








幼い頃、ホテルに閉じ込められたことがある望は
その時の光景がフラッシュバックするのか
ブルブル震えとるから


その大きい体をそっと抱き寄せて
赤ちゃんをあやすように背中をトントンとリズム良く叩いて。













「1人は嫌やったな？ごめんやで」









「っ、はっ、あきとっ、俺っ、まだっ、」








「うんうん、ええよええよ
俺が怖くないようにしてやるから」










「…っ、刃物っ、見えるっ、ぁ、っ、」









「ううん。望、のんちゃん、なんもあらへんよ、
俺しかおらん。」






「…っ、はぁっ、………………」








幻覚まで見えてるのは結構なんよな、


焦らんように望の頭を俺の胸に押し付けて
しばらくそのままで。









「大丈夫。だいじょーぶ。怖くない。」








「……っ、、ぇ、っ、はぁっ、」







「望上手。ゆっくりゆっくり。」








・・








「……っ、……………………」












何分そうしていたのだろう。
嗚咽と過呼吸の音は止んで部屋を静寂が支配する。











「ん、寝れたな、よかった。

…望ほんまごめんな。1人はあかんのにな」









重くなった体をそっと離して抱っこで布団まで移動する。




薄暗い部屋の中、望の頬に一筋ひかる涙の跡を拭って
毛布をかけてやって。









いつになるかわからへんけど、
望が怖いって思わんくなるまでずっとそばに居てやろうと思う。




トラウマに縛られる生活がなくなるように。










…………望、おやすみ。










fin

きっと明日は大丈夫→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す