雪が降る前に、【雪男】 (ページ38)

今日:18 hit、昨日:41 hit、合計:604,146 hit

◎ ページ38

・

「ひゅ、っ、」

がバリと身体を起こす。

目をつぶってただけで悪夢が思い出される。

翔太は隣にいない。まだ作業部屋なんだ。

階段を降りて2階に行っても誰もいない。

そりゃそうだよ。みんな疲れてるんだから。

「………きえたい。」

いますぐどっかいきたいな。

……かあさん。

おれ、にぃにやにいさんたちの、やくたたずになっちゃったの。

かあさんなら、おれのこと……

やめよ。

目を閉じると聞こえる幻聴。

そして、目を開けると見える幻視。

限界が来てるのは分かってた。

「ごめんなさい。」

弱くなってごめん。

頼りなくてごめん。

こんな兄でごめん。

こんな弟でごめん。

ごめん、ごめんなさい。

おれがきえても、だいじょうぶ。

このかぞくなら、だいじょうぶ。

「…あった。」

フラフラとした足取りでキッチンに。

ペタペタと裸足で向かう。

取り出したのは、愛用の包丁。

お世話になってる子に対してこんなことするなんて、料理する奴の風上にもおけないけど許してほしい。

俺は早く、救われたい。

頭ではダメだと分かっている。

けど、寝れていない俺の頭は考えることを放棄している。

「…あははっ。」

ぐさり。

俺は自分でお腹を刺した。

ふらりと傾きバタン、と音を出してしまった。

…俺のばか。誰か起きちゃうだろぉ……