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幾ら化粧で化けていても、輪郭や目の形、纏う雰囲気はそう簡単に変わりはしない。
今井ほど馬鹿ではないこの男なら気が付きかねないとは思っていたが、こんなに早く気がつくとは。
「今井さんコイツです!」
指し示された先へと視線を動かした今井はぎょっと目を見開き口抑え、伊藤はビクリと肩を跳ねさせる。
「Aくんのデートしてた相手、伊藤ですよ!化粧とかで多少雰囲気は違いますけど間違いないです!」
「伊藤ォ!Aを騙してどうするつもりだったんだ!」
「騙したわけでは…」
言葉に詰まった伊藤は視線を足元へと落としてしまった。
「お前ら2人が何を企んでるのかは知らねーが、Aは純粋ですごーく馬鹿なんだ。ましてや出会いのねぇ男子校生徒に対して女装して掛かるなんてな」
今井の言葉が伊藤へと刺さる。
言いたい放題に紅高生2人が好き勝手野次を飛ばすことに腹の立った三橋がポケットから"小道具"を取り出すために手を突っ込んだ時だった。
ひょっこりと角から顔を覗かせた赤坂リコが唐突に三橋を突き飛ばしたのだった。
あまりに急なことで膨らんでいた険悪な空気は一瞬にして萎み消えてしまった。
「帰りが遅いから来ちゃった」
「だからって突き飛ばすことねーだろ!」
「だって声かけたのに誰も気がついてくれなかったんだもん」
ふん、と顔を背けるリコに口をもごつかせるも良い反論ができないことを察して口を噤む。
「卑怯だぞ!女子を連れてくるなんて」
こんなにマブイ女子と知り合いなのか、と心の内で共学校はいいなと羨む今井は当初の目的なんか頭からすっかりと抜け落ちてしまった。
半泣きで三橋への嫉妬を吐露する
「連れてきたわけじゃねー!勝手に来たのじゃ」
「人のこと金魚の糞みたいに言わないでよ!」
いよいよ何で集まっていたのかを全員が忘れて2人のやりとりを眺めようとなった時、軌道修正をするために谷川が動いた。
ぼうっと空を眺める伊藤のもとへいそいそと近づき、自分よりも遥か上にある頭を近づけるため制服の裾をぐいっと引っ張った
「なんで女装してたんですか」
Aのことは一旦置いておいた。
噂の伊藤は硬派で三橋とは正反対の性格、卑怯な手は使わないと聞いていた。そんな人が自分の考えを曲げてまで対して名の上がっているわけではないAに絡む理由がないからだ。
冷静になった谷川の真剣な目に映っていたのは、下手くそな笑みを浮かべたツンツン頭の自分。谷川の後ろでは三橋、今井、リコが騒いでいてこちらに気がついてる様子はない。
「…本当はあの日、断ろうと思ったんだよ」
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ハイキュー大好き!!(プロフ) - めっちゃ続きが気になります!!更新楽しみにしてます!! (2021年3月2日 7時) (レス) id: 2d39102061 (このIDを非表示/違反報告)
奏菜(プロフ) - とても好きです!続きめちゃくちゃ楽しみにしてます!! (2020年8月13日 7時) (レス) id: acc6cf3fa0 (このIDを非表示/違反報告)
夢子(プロフ) - 斬新な設定に最初は驚きましたが、すぐに物語に引き込まれてしまいました!2人はどうなるのでしょう、結ばれるのでしょうか…!続きが楽しみです! (2020年8月9日 17時) (レス) id: 72b9a547c8 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - 伊藤くんと主人公がどうなるか気になります!! (2020年8月7日 23時) (レス) id: baa397239c (このIDを非表示/違反報告)
アホ犬 - うわぁめっちゃ好きです!!続き楽しみです! (2020年8月7日 1時) (レス) id: f5f8406621 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2019年11月11日 17時