イキシアの陽炎 (ページ3)

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1話ページ3

中学三年生に進級するのと同時に私は、府立四天宝寺中学校へ転校してきた。小学校の頃から、両親の都合での転校が多く、慣れたものではあったが中学三年生ということもあり、やはり一抹の寂しさがあった。なので、今回はあまり人と関わらないように努めると決意していた。
そのはずだったのだが、いま、適当に自己紹介を終えた私は早くも、揺らいでいた。男子生徒がひとり話しかけてきたのだ。

「Aさん！東京ってどんなん？カラスぎょーさんおる？」
「ええ？ああ、うん‥‥それなりに」

妙な話題を振られて困惑していると、顔の良い男子生徒が来た。カラスの量は大阪とそう大差は無い。

「謙也？その辺にしとき！Aさん困ってるで。
あんま質問ばっかしても困るよな、ごめんな」

そういえば先程、忍足と名乗るこの男が話題にしていた。蔵石白ノ介とかそんな感じの名前だったと思う。
話に聞いていた通り蔵石は顔が良く、顔が良かった。

「あ！Aさん名前で呼んでええかな、えーっとたしか、Aちゃん！」
「謙也、女の子にあんま馴れ馴れしくしたらあかん！」
「ええやん、白石は気にしすぎなんやって」
顔の良い男の名前は白石蔵ノ介だそうだ。そうして馴れ馴れしい男の名前は忍足謙也と言った。
本当に馴れ馴れしいと思うが、周囲との関わりを絶とうとしていたとはいえ、揺らぎに揺らいでいた私の、寂しい心には丁度いいと言えば過言だが、ありがた迷惑のありがた倍増セール位にはなっていた。

「あ、次移動教室やんな、Aちゃん一緒にいこ」
「謙也？自分俺の話聞いてないん？」
「ごめん。校内わからないから一緒に行ってもらえると助かる…」
「「標準語や」」
「うわぁーーでもありがとう」
「あんま気にしないでな。こういうノリやねん」
白石の言葉に続いて忍足が笑顔を見せる。

廊下を歩きながら、私の弱い意思による当初の決意は、否、計画は破綻した。