私の中のキムテヒョン

14【TH】 ページ14

「寝ちゃったの？」





自分の発した声が、耳から聞こえてきて驚いた。


ゆっくりと目を開いてみると、ぼんやりと部屋の様子が目に映る。






「ねぇ」







もう一度問いかけてみると、やはりその声は「彼女」の口から発せられて耳に届いた。



じっと目を凝らせば、ぼんやりしていた部屋がだんだんクリアになってくる。



ふと左手に視線を落として、その手を閉じたり開いたり。







「わお」







どうやらこの体の持ち主は眠ってしまっていて、今はオレがこの体を自分の意思で動かすことが出来るらしい。



「彼女」は、自分の見たもの聞いたものだけでなく五感のすべてがオレと共有されるのだという事実に驚愕して、困惑して、オレに出て行けとひたすら文句を言っていた。



酒でも飲んでなきゃやってられない心境のようで、ビールをぐいぐいと飲み続けるものだから、あの苦味を何度も味わうのに正直うんざりしたけれど、そのうちぱたりと静かになってしまった。







「はぁ・・・どうしよう」







呟いたその声は、当たり前だけれどオレの本来の声よりずっと高い。



この状況に困惑しているのは、オレだって、同じだ。



事故にあって、車がぶつかった後の記憶は一切ない。



その後、気付いたら、『ここ』に居たのだ。



しばらく静かにしていたけれど、「彼女」が鏡で顔を見た時に気付いた。あの事故の時の人だと。



見たのはほんの一瞬だったけれど、凛とした姿が印象的で、かわいいなと思ったのを覚えている。







「オレの体、どうなっちゃったのかな・・・」







ぽつりと呟いても、もちろん誰も答えてはくれない。

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